<概説>
虚構ー模倣ー演技
ツクリモノめいたそのすべての要素が、とある絵の争奪戦を劇的に演出する。ロブ=グリエの先鋭化した映像感覚を集約した前衛芸術映画の極地。
<感想>
私、作品の読みとりにはかなり自信があります。
世の難解とされる映画でつまづいたことは記憶にないですし、伏線や暗示にも割と気がつく方だと自負があります。
しかしこれは、難解。
映像がすごく気持ちいいのです。それはわかる。
鏡やガラスの混在によって構成される、圧迫感と奥行きが並存する映像。過去と未来が入り乱れる、独特の時系列による反復したサブリミナル。
モノクロからカラーに変化したぎこちなさもなく、そこはさすがロブ=グリエ。私は大好き。
ただこれを筋道立てた作品にするのは不可能ではないかなあと、一般層に勧められないのがひどく残念。
『ヨーロッパ横断特急』や『快楽の漸進的横滑り』は比較的推察しやすい構造でしたが、本作は全力で悪いクセを出してきました。これを受け付けられるのは『嘘をつく男』とかそのあたりが大丈夫な層。
メタ・メタ・メタフィクション。
本当に考えれば考えるだけ頭が痛い。
まあそんなところも魅力なのですけれどね、難儀。