Inagaquilala

エヴォリューションのInagaquilalaのレビュー・感想・評価

エヴォリューション(2015年製作の映画)
3.9
新宿のシネマカリテの午前の回で観賞するが、残念ながらこれは朝一で観る作品ではなかった。映像は全体的に暗く、そのなかで「赤」だけが目立つような映像設計がされていて、ヒトデの赤、主人公の少年が着用する水着の赤、そして血の赤、それらのスミが少し入った「赤」が、観る者の目に強く印象づけられるようになっている。

それと「星」も象徴的な形象として登場する。先のヒトデもそうだし、手術台を照らすライトの配置も星型で、最後に主人公の少年を助ける看護師の女性の名前も「ステラ(星)」だ。

そういう色彩や記号があちらこちらに散りばめられた作品で、一度の観賞では監督の意図する世界を隅々まで認識し得たとは断言できないが、「エヴォリューション(進化)」とタイトルで展開される、この女性と少年だけで構成された不思議な空間は、かなりの哲学的な命題まで想起させる。

舞台は少年と女性だけが住む孤島。実はこの島には重大な秘密が隠されているのだが、それを主人公の少年の視点から描いていく。そして、それは冒頭に登場する水中からの海上への眺めが、やがて水中を泳ぐ少年の視点だと明らかになるところから始まっているのだが、この島の秘密が、彼の視点から明らかになっていく。

秘密は物語の進行とともに徐々に明らかになっていくのだが、このやや錯綜した仕組みを、どのように観客に理解させるのだろうかと興味を抱いて観ていたのだが、監督は主人公と心を通わせる看護師の女性を設定することで、彼女の口から究極の秘密を少年は知ることとなる。

ショッキングなシーンも多いし、どちらかというと暗澹たる気持ちにさせられる物語で、最初に記したとおり、朝一から観るには相応しくない作品なのだが、ミステリアスで深く心を抉る作品であることも確かだ。

主人公の少年が最後に見る風景が、希望なのか絶望なのか、大いに判断が分かれるところではあるが。
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