ミーマ

シング・ストリート 未来へのうたのミーマのレビュー・感想・評価

5.0
最高!この一言に尽きる。

もともと青春ドラマやロマンス映画にはめっぽう弱い私だが、そこに80sミュージックを持ってこられたら、もう好きになることはわかっていた。だから、期待度マックスで劇場に入った。この映画は、そんな期待を軽々と超えてしまった。ここまですごいとは!

1985年のアイルランドは、経済的にも不遇の時代だった。そんななか、テレビから流れるイギリスのロックのミュージックビデオは、当時の若者の心の癒しだったに違いない。そんな時代的背景を交えつつ、家庭環境に恵まれない主人公、コナーは悪名高き高校、シング・ストリートに転入させられる。クラスメイトや校長からも目の敵にされ、孤独な日々を送るコナーの前に美女が!典型的な「ボーイ・ミーツ・ガール」の青春ものに、MTVのヒットナンバーが絶妙にマッチする。

私事で申し訳ないが、私も高校時代にバンドのボーカルをやっていた。始めた理由は、意中の女の子を振り向かせたかったからだ。男の子なんてそんなもん、青春なんてそんなものだ。でも、その時にしか味わえないなにかキラキラしたものこそが青春ではないだろうか。そのキラキラ感が、この映画には詰まっている。バンド仲間との友情、届きそうで届かない空回りしぎみな甘酸っぱいロマンス、音楽への情熱。常に微妙に揺れ動く感情を、この映画はうまく表現している。「ハッピー・サッド」幸せと悲しみが同居する、複雑な心情。でも彼らはいう。それこそがアートだと。生きることはアートであり、一人ひとりがアート。音楽と向き合う中で、バンドメンバーや主人公が思いをよせる年上の女の子、ラフィーナは、周囲の環境をも動かしていく。

この映画、完璧かと言われれば、そうではない。突っ込みどころはある。でもそんなことは、この映画を貫く青春を突っ走るパワーの前では些細なことに過ぎない。幸せも悲しみも、すべて受け入れて、前進しよう、この映画は観る者にそう訴えかける。最後には、さわやかな涙が頬をつたるだろう。
ミーマ

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