はこ

ダゲレオタイプの女のはこのレビュー・感想・評価

ダゲレオタイプの女(2016年製作の映画)
3.0
近頃黒沢清は引退モードに入ったのかなと思わせる。とある漫画のセリフを引用すれば「これはおまえが手練手管だけで作れるもの」である。フランスでフランス人の俳優を使って、怪奇映画じみた映画を作るにあたって、監督はいままで観てきたジョルジュ・フランジュや『回転』だのがあたまの中にあったのは間違いないだろう。そして登場するのはやたらと広い空間にある閉ざされた世界と、いままで何度も黒沢清の作品に登場した幽霊たちが登場する。正直、この人はフランスまで行って自分の作品をまとめて総集編にしたような映画を作ってどうしたいんだろう、という気分になった。フランス側からの要請かも知れないし、監督自身の強い意志かもしれない。かつての黒沢清の作品には幽霊の動き、ビニルカーテンの描写、廃墟のような建物がかつては目新しかった。しかし、2016年の現在に置いては、観客はかつての総集編すなわち手練手管だけで作られたものを改めて見せられるのである。『クリーピー/偽りの隣人』はうまくそれが作用した。だが今回はうまくいっていない、そのように思えた。
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