そこでは、説明のつかない不条理が日常。
ホラー秘宝まつりで日本に紹介された、5つの短編から成るオムニバス・ホラー。
オムニバスと言っても、ちょっと変わった形式をとっていて、五篇がシームレスに繋がっているスタイル。
それぞれの話は独立しているようで、実は「サウスバウンドという場所を舞台にした一夜の話」なのです。
しかも全体がループしています。つまり、始まりと終わりが繋ぎ目なく繋がっている・・・という、観ないとよくわからない、なんだか説明し辛い仕上がり。
車をとばす二人の男が、荒野に現れた謎の怪物に追われる話。
三人のバンド女子が砂漠で立ち往生していると、どこか雰囲気のおかしい家族に助かられる話。
交通事故をおこした男が被害者を助けるために、自ら手術をしなければならなくなる話。
カルト集団に囚われた妹を救出するために奮闘する兄の話。
両親と娘という幸せ家族が、突然侵入してきた殺人鬼たちに襲われる話。
・・・これらの話がシームレスに、次から次へと語られてゆきます。
正直にいうと、面白いか?と訊かれたら答えに困ってしまう代物でした。
グッとくる部分もあるんです。あるんだけれど、全体的にはとても不親切で良く分からない、難解と言ってしまってもよい映画じゃないですかね。
何故かと言えば、各エピソードの根本にある、重要な点について何ひとつ明かされないからなのです。
明らかにわざと説明を省いているので、最後まで観たところで解決されない謎ばかりが頭にこびりつく結果になります。
「あの怪物は結局のところ何なのか?」
「アレックスに一体なにがあったのか?」
「あの家族の正体は?」
「ルーカスに手術をさせたのはただの嫌がらせなのか?」
「父親は何の罪を背負っていたのか?」
「マスクの男たちは何のために来たのか?」
「どうして怪物が出現したのか?」
他にもたくさんの疑問がわいてくるのですが、とにかく劇中で何も語られないので本当にモヤモヤします。
み〜んな、思わせぶりなだけで、登場人物の目的も何もサッパリ分かりません。
逆に、このわけの分からなさこそが必見のポイントと言えるのかも(汗)?
どうやら、砂漠の街ぜんたいが、何者かに支配されたカルト集団の支配地みたいなんですよね。
自分でも知らない間に怪物に支配されている人もいるようで、わかってカルトに参加している連中は年もとらず、不思議な能力をもつようです。
一度迷い込むと抜け出せなくなり、恐ろしいめにあうのが定番。
でも、明解さがまったく無いので、これらも「たぶんこうなんじゃないかなあ?」といった程度の理解でしかありません。
本作を100ピースほどのパズルに例えるなら、重要なピースが20ぐらい欠けたままで完成させようとしている様なもので、頭の中に濃霧がたちこめてしまっている感覚に襲われること必至。
あんまりにも判然としないので、劇中で起こっていることに、ちゃんと一つ一つ説明がないとダメなタイプには向かない映画と言えるでしょう。
普通のオムニバスから逸脱したアイデアは悪くないものの、不親切さだけが目立ってしまっているのが、やはり最大の難点。
また内容としても、従来の「モンスター」や「カルト」、「ホームインベージョン」といったよくあるテーマを扱っていて、それほど目新しいわけでもありません。
とは言うものの、例えば、医者でもない男が手術を強要される話はイヤ〜なオチがとても印象的ですし、謎の怪物は不気味なデザインが独特でCGの出来も悪くないうえに、存在が不条理そのもので目を見張るものがあります。
少なからず見どころもあるので、「なんだか分からないからつまらない」と簡単に切り捨てるのも忍びない、そんな一本。
想像力をフルにして挑みましょう。
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