<概説>
列車客室での映画関係者による新作の打ち合わせ。彼等は麻薬密輸人をテーマに、あれやこれやと物語を思い巡らせる。一方同時刻、彼等と同じ列車にひとりの不審な男が乗り合わせて…
ヨーロピアン・アヴァンギャルドの最重要作品とまで言われたメタフィクションサスペンス。
<感想>
『去年マリエンバードで』
『不滅の女』
前二作でやたら挑発的な作品を放ってきたロブ=グリエ監督ですが、本作はなんとまあシンプルな物語。
所々に"らしい"不自然なショットが挟まれたりもしましたが、かなり大衆娯楽的な印象を受けましたね。
しかしそれがつまらないかと言えばそんなこともなく。むしろ『ユージュアル・サスペクツ』だのの後続作品の源流とも言えるような、洒脱の効いた作品に感じられました。
ラストの笑顔なんてなんともシニカル。メタフィクションの階層が二階層のみと勝手に想定していたのに、最後の最後で我々第三階層まで巻き込んできます。
観客を作品に取り込むようなアプローチは彼の作品では珍しくありませんけれど、思わず「やられた!」というような気分です。
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ところで"縛られた女"というモチーフは美的観念において一般的なのでしょうか。東大全共闘でも三島由紀夫御大が似たようなことを言っておられたような記憶がございます。