Inagaquilala

THE PROMISE 君への誓いのInagaquilalaのレビュー・感想・評価

THE PROMISE 君への誓い(2016年製作の映画)
3.8
寡聞にして承知していなかったが、第一次世界大戦のときに、トルコでこのような民族浄化の動きがあったとは。作品は、その150万人が犠牲になったと言われるオスマン・トルコによるアルメニア人に対する大量虐殺事件を扱ったもの。「ホテル・ルワンダ」のテリー・ジョージ監督が、主人公のラブロマンスも織り込みながら、壮大なヒューマンドラマとして描いている。タイトルからは容易に察知できないが、時代の中で翻弄された人間たちの姿に、社会派的な側面からもアプローチしている。なかなか観応えのあるあ作品だ。

トルコ南部の小さな村に生まれ育ったアルメニア人のミカエル。彼は家が貧しいため、婚約者の持参金で医学を学ぶため首都イスタンブールの大学に入学する。寄宿した親戚の家で、ミカエルは同じアルメニア人女性のアナと出会い、互いに惹かれ合う。しかし、ミカエルには故郷に婚約者が、アナにもアメリカ人でAP通信の記者であるクリスという恋人がいた。

第一次世界大戦が始まるとともに、時のトルコ政府は、国内のアルメニア人への弾圧を強め、ミカエルも命からがら故郷への村へとたどりつく。母の強い要望で婚約者と新生活を始めるミカエルだったが、そこにアナが現れる。アルメニア人への弾圧は、故郷の村にも迫り、村人は無残にも虐殺されてしまう。アナの恋人クリスは、このアルメニア人への弾圧を世界に伝えるようと奔走しながら、アナの行方を追う。

ふたつの愛の行方を交えながら、物語はクライマックへとなだれ込んでいく。単なる戦争ものではなくて、そこに主人公の揺れる愛情を織り込んでいるところが、ドラマ性を強くしていると感じた。とくに主人公の母親の存在が、キーポイントともなっている。トルコを舞台にした作品だが、ミカエル役に「スター・ウォーズ 最後のジェダイ」のオスカー・アイザック、アナ役に「イヴ・サンローラン」のシャルロット・ルボン、クリス役に「ダークナイト」のクリスチャン・ベールという豪華なキャスティング。社会的な視点を持った、ダイナミックな歴史スペクタクルとなっている。終盤のトルコ軍との攻防には、思わず手に汗握ってしまった。
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