はる

パターソンのはるのレビュー・感想・評価

パターソン(2016年製作の映画)
4.5
人生の美しい瞬間って案外こういう事だよなぁと思わせてくれる詩集のような優しい作品。
アダムドライバー演じるバス運転手のとある7日間を淡々と綴った作品で、大きな事件が起きる事もないし、誰かの喜怒哀楽が爆発することもない、静かな波の様な時間の中に、人間という生き物の可笑しさや優しさ、人生の美しさを魅せてくれます。
タランティーノなんかもそうですけど、人生の岐路になるような出来事にフォーカスを当てるのではく、一見なんでもないような日常にこそ幸せが垣間見えると感じられる価値観って物凄く素敵で、アダムドライバーが1日の終わりに必ず行き着けのバーに足を運んだり、少女に自作の詩を聞かせてもらったり、コインランドリーで練習するラッパーのリリックに耳を傾けたり、そういうのってなんか良いじゃないですか。最後のエピソードである永瀬正敏さんとのシーンはその中でも特に良いですよね。永瀬さんの台詞の中に「詩の翻訳はレインコートを着てシャワーを浴びるようなもの」というのがあって、この映画の本当の良さって字幕で観ている身としては100%は分からないのかもしれないけど、この118分の居心地の良さは本物ですよね。ジムジャームッシュだから作れる無性に愛おしい1本でした。
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