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七月のランデヴーのエーコのレビュー・感想・評価

七月のランデヴー(1949年製作の映画)
3.3
痛ましさも爽やかさもある青春群像劇。前半、電話のシーンがかなり続くため、視線も空間も生じなくてかなりじれったい気分になる。クラブの場面では前後左右上下が入れ替わりまくるダンスが、カメラに当たりそうなくらいの勢いで行われてびっくりする。成功し演説するルシアンを囲む人々と、それを見下ろすのは女優業がうまくいかない女。ベッケルの陰惨さ。男女が横に並んでフレームに収まることが恋路の明るさを示していて、男二人が横に並んでフレームに収まると浮気を見つけてしまう映画。飛行機の覗き窓と外を繋ぐ視線にはベッケルの強みである視線劇の巧みさを再度印象付けられた。『穴』、『モンパルナスの灯』、『幸福の設計』、『現金に手を出すな』と、ベッケルの感情表現は「落胆」に強く出るように思える。視聴体験としてはなかなかつらい。
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