Inagaquilala

レゴバットマン ザ・ムービーのInagaquilalaのレビュー・感想・評価

3.5
スーパーマンもスバイダーマンもアメリカンヒーローはここ10年悩み続けている。そして、このバットマンも例に漏れず。

クリストファー・ノーランが手がけた、「バットマン・ビギンズ」から始まる「ダークナイト・トリロジー(Dark Knight Trilogy)」では、バットマンは自らの存在価値にひたすら疑問を呈する。とくに第2作の「ダークナイト」(2008年)からは、正義は何か、ヒーローとは誰か、劇中で延々と煩悶する。そのあたりから、この悩みは伝染し、アメリカンヒーローたちの内面に切り込んだ作品が多くなる。

この「レゴ」の「バットマン」も実は単なるヒーローではない。人々からは「自分勝手だ」と言われ、ひとりぼっちのネクラなどと指差されている。

ホームページなどを見ると、たぶん子供向けにつくられた作品なのだろうが、バットマンはかなり自虐的な人物として描かれている。

長年の好敵手であるジョーカーにも「I hate you」をまるで「I like you」のようにささやく。たぶん、作品をギャグの方向に引っ張るために、そのような設定にしてあるのだろうと思うが、この優柔不断なヒーロー像はいまや完全にドラマとして定着しつつあるかもしれない。

「レゴバットマン」のバットマンは相当厄介な存在として描かれていく。ヒーローは孤高を保たなければいけないと思う反面、かなり淋しがり屋。でも、すべてをひとりで解決しようとする。

ヒーローとしてのプライドなのか、それとも言われるような自分勝手なのか、当初、バットマンは人と協力することを徹底的に拒否する。

それを見抜いてか、永遠のライバルであるジョーカーも自ら捕まることを申し出て、収監される。敵がいなくなることで、バットマンの存在価値はどんどん下降していく。ジョーカーあってのバットマンではないかとすら思いだす始末だ。

子供向けとはいえ、じゅうぶん大人が観ても楽しめる作品になっている。レゴでこれだけのアニメーションが可能であることが、まずびっくりなのだが、そのブロックが繰り出す世界観がまた目新しい。ファントム・ゾーンと呼ばれる天上の空間を支配しているのが、レゴのブロックそのものというのも、なかなか洒落た設定だ。

途中から「with your help from my friends」的な、みんなで力を合わせて敵を倒しましょうよ、みたいな展開になっていくのだが、最後は敵すらもその輪の中に引き込んでしまうところが、子供向けといえば子供向けの教訓臭がただようのだが、意外に新鮮に映ったりもした。

まるっきり、おもちゃの国の出来事とも思えないところがある不思議なレゴ映画。色彩はもちろん鮮やかだが、レゴ人形の登場人物たちが、まるで人間のように表情が豊かなのが、印象に残った。

蛇足だが、もう一方のDCミックスのヒーロー、スーパーマンもこの作品には登場する。ていうか、ジャスティス・リーグまで結成されているので、びっくり。まあ、それほどメインのストーリーには関係してきませんが。
Inagaquilala

Inagaquilala