ピーターパーカー

リトル・マーメイドのピーターパーカーのレビュー・感想・評価

リトル・マーメイド(2023年製作の映画)
3.0
話の展開は概ね原作通り。
アリエルの立場に立てば、頭が硬くて過保護な親の呪縛から果敢に抜け出し、様々な障害を乗り越えて意中の相手と結婚するという、いかにもティーン好みのストーリー。

他方、父親の立場に立てば、世間知らずで言うことを聞かない娘をどうにか守りたい親心で色々と注意してきたにも関わらず、その真意を理解されず、挙げ句の果てにはその娘が人間界という別世界に嫁いでいくという何ともやりきれない(が、なかなか味わい深い)ストーリー。父親の台詞にも「寂しくなる」という言葉があったが、まさにその通りと思う。

このように、視聴者の属性によって多面的に楽しめる作品である点は評価できる。


ただ、歌唱パートはもう少し迫力と聞き応えがあるものを期待していただけに残念だった。
また、アリエル役の女優さんも個人的にはイマイチ。肌の色がどうのという話ではなく、本作は恋愛モノだけに、単純にもう少し美形の女優がよかったのでは?と思う。もちろん、彼女が美形だという人もいるだろうし、この点は多分に個人の感覚に依ることをお断りしておく。

最後に、本作のラストシーンで勢揃いした人魚たちには、これまで白人×女性というのが一般的だった人魚のイメージを大きく打ち破るかのように、男性や黒人、アジア人の人魚が含まれていたことには心を動かされた。

そもそも、本作は人間と人魚という、生物の種さえ超えた愛を描く究極の多様性がテーマである。
そのような作品だからこそ、波紋を呼ぶことを恐らく想定しつつも、多様性に多大な配慮した配役と描写で、ダイバーシティの問題を抱える現在の人間社会に生きる我々に一石を投じたのだろう。
ポリコレと叩かれてはいるが、その試みは個人的には前向きに捉えたいと思っている。