戦死した婚約者の墓に花を手向けた敵国の男性。序盤では登場人物達が心の傷を埋めあう幸せな時間が続くが、ある一点をきっかけに全てが仮面をぬぐい去り美しい映像の中に一方の欲望とエゴ、そしてもう一方の行き場のない苦悩が見え隠れするという生々しさがどっと押し寄せ、観終わって疲れた(笑)。モノクロが主体の映像の中でフランツの記憶に触れる箇所だけカラーに、という演出も自然。ミステリアスな仕立てで若干ミスリードを誘ってはいるが、その実は人間の感情をこれでもかと映像とセリフでむき出しにする、紛うことなきいつものオゾン作品。