改名した三島こねこ

冷たい熱帯魚の改名した三島こねこのレビュー・感想・評価

冷たい熱帯魚(2010年製作の映画)
3.7
プラチナアロワナ参考価格:¥40,000,000

日本映画界でも屈指の胸糞映画と悪名高い一作。埼玉愛犬家連続殺人事件をモデルにしているらしく、そういったデータベースが大好きな人は要チェックだ。

公開が2010年といえばだんだんとBPOだのの表現自粛要請が強くなってきた時期だったはずだが、その時期にこんな強烈なパンチの作品の制作に踏み切ったことにまず拍手を。

ゴア表現については容赦がない。邦画版『悪魔のいけにえ』と表現した俳優がいたはずだが、たしかにあの名作に見劣りしないだけのスプラッタだ。モザイクをかけてしか広告に使えないシーンも多々あり、本当によく邦画でこれをやったなと素直に感嘆する。

胸糞映画という評判もわかるのだが、正確に表現するのであれば生理的に嫌な映画。現代日本人がアレルギーを起こす要素が山盛り。都会的に居住スペースの少ない店の内装。形骸化した家族の関係性。理不尽な理屈を正当化する老害。
ラストの展開は個人的に胸糞とまでいかず、むしろ『凶悪』の方が最悪だった。こちらは終幕を担当した女優の演技の拙さが結果的に含みをもたせて愉快な印象。

しかし本作で一番注目するべきはそこではない。でんでんと黒沢あすかの演技を見るのだ。二人の演技は素晴らしすぎて、「もしかしてこの二人本物の××××なのでは…?」と疑ってしまう。それどころか黒沢あすかは、もう主演こちらだろと断言してしまうくらいに主役を食っている。
女性キャストなら『黒い家』の大竹しのぶが長いこと名役と言われてきたが、個人的には黒沢こそがトップオブトップの嫌な女だ(褒め言葉)。

ついでと言っては申し訳ないが、裵ジョンミョン演じるオオクボはとても愛嬌があっていい役であった。そのチャラついた髪カツラだったのかよと、その時点で本作がブラックユーモア映画であることに気がついた。

本作一番の笑いどころは元の事件の舞台の店がアフリカケンネルだったのに、アマゾンゴールドに改名していたところなんですけれどね。それでいいのかAmazingPrimeVideo。