藻尾井逞育

若葉のころの藻尾井逞育のレビュー・感想・評価

若葉のころ(2015年製作の映画)
4.0
「愛がないなら別れるはず。大人って謎だわ」
「静かにそばにいてくれる。何を考えているか謎だけど温かい人よ。人を好きになるってこういう気持ち?」
「そういうのが目的じゃない」
「ただ時が2人を通り過ぎてしまった。いつかほかの誰かに心を奪われてすべては思い出になる。でもあなたを忘れない」

離婚した母や祖母と一緒に台北で暮らす女子高生バイは、親友ウエンと男友達イエの関係に心を痛めていた。そんなある日、母ワンが交通事故で意識不明の重体に陥ってしまう。偶然にも母のパソコンから初恋相手リン宛の未送信メールを発見したバイは、母の青春に思いを馳せる。

母と娘、二世代にわたる"17歳"の切ない初恋が交錯していきます。戒厳令下の母の17歳、民主化後自由になった娘の17歳、この二つの時代に行われた恋愛がオーバーラップしていきます。二つの恋愛で同じ台詞が男女逆になっていたりもしますが、時代や社会環境は違っても、人を好きになった時の自分で自分を抑えきれないもどかしい気持ちは普遍的なものなんですね。そこに友情とかも絡んでくると本当に心を痛めてしまいます。学校に没収されたレコードを盗み出し、校舎の屋上からフリスビーのようにおもいっきり飛ばすシーンは、体勢や権威、あらゆるしがらみから解き放たれ自由を勝ち取る象徴のようで胸が熱くなります。そして少女たちに吹きつける風、友達同士語り合う時の新緑、描かれる風景の一つ一つがまさに青春、若葉のころですね。
ところで、"会いたい"のメールを受け取った母の初恋の相手、ちょっと残念に思われます。ワイン片手に音楽を聴いたりそこそこ優雅な生活を送ってはいますが、初恋を引きずっているのか恋愛にも真剣になれず、悪友とつるんでいつまでも大人になりきれません。初恋の相手からのメールに下心見え見えにちょっと期待してみたりして。まぁ、期待するなというほうが無理なんでしょうが。いずれにしろお互い別々に過ごしてきた時間があるので、娘が期待したような恋愛には展開しそうにないですね。
やっぱり、初恋は思い出として残したほうが良さそうです。メールを送信できなかったことがむしろ正解だったのかな⁈

2024/04/03
台湾加油!