アキラナウェイ

鉄コン筋クリートのアキラナウェイのレビュー・感想・評価

鉄コン筋クリート(2006年製作の映画)
4.5
原作は「ビッグコミックスピリッツ」に1993年から94年にかけて連載された松本大洋による漫画。残念ながら一度も読む機会はなかったけど、松本大洋の画力は唯一無二で目を見張る個性があって、個人的には好き。

監督はアメリカのCGクリエイター、マイケル・アリアス。1991年に初来日、日本人女性と結婚し、日本での永住権を取得しているのだとか。

義理人情とヤクザが蔓延る町、宝町。其処に住む少年・クロ(CV:二宮和也)とシロ(CV:蒼井優)は、驚異的な身体能力で街の中を飛び回る。ある日彼らの前に3人組の殺し屋と蛇という名の男性が現れる—— 。

宝町の派手で雑然とした街並み、その色彩、デザイン、昭和の匂い。

その世界観に一気に魅了されてしまった。

そんな宝町を縄張りとする少年達。
クロとシロ。
彼らは"ネコ"と呼ばれ、暴力に明け暮れる。

屋根の上を駆け、
飛び上がり、
宙を舞う。
躍動感が溜まらない。

終盤にかけて、物語は観念的で抽象的な、クロの心の闇に焦点を絞り進み続ける。

クロがシロを守っていたのか。
シロがクロを守っていたのか。

2人のかけがえのない絆を感じさせる展開ではあるが、物語としての疾走感をやや殺してしまった感は個人的に残念。

闇堕ちして歯止めが効かなくなるクロと、そんな彼を闇へと誘うイタチとの一人二役をそつなく演じる二宮和也。元々器用な俳優なので、それはあくまで許容範囲内。驚いたのは純真無垢なシロの声を演じた蒼井優である。クレヨンしんちゃん並みに作り込んだ声からは彼女を想像する事が出来ない。それでいていつまでも耳に残る特徴的な声。見事なり。

とにかく映像と世界観に圧倒され、結果、大大大好きになってしまった。

「もちも~ち。こちら地球星、日本国、シロ隊員。応答どーじょー」

うん、やはりシロの声が耳から離れない。