風の旅人

美しい星の風の旅人のレビュー・感想・評価

美しい星(2017年製作の映画)
3.5
「人生は近くから見ると悲劇だが、遠くから見ると喜劇である」(チャールズ・チャップリン)

SF的な設定を援用した家族の再生の物語。
大杉家は一見幸せな家族に映るが、実はそれぞれに問題を抱えている。
父親の重一郎(リリー・フランキー)は後輩の若い女性と不倫をし、母親の伊余子(中嶋朋子)はマルチ商法にはまり、息子の一雄(亀梨和也)は目的のないフリーターをしており、娘の暁子(橋本愛)は心を閉ざしている。
まず最初に重一郎が「火星人」に目覚め、次いで一雄が「水星人」に目覚め、最後に暁子が「金星人」に目覚める。
伊余子だけが地球人のままでいる。
現象だけを見れば、彼らが本当に覚醒したのかどうかはわからない。
常識的に考えれば、重一郎は狂っており、一雄と暁子は騙されていることになる。
重要なのは彼らがそうと信じ込んでいることである。
伊余子は「美しい水」の効能を信じ、後に騙されていることに気づいたが、彼女と彼らの違いは本質的にはない。
重一郎の「地球を救う」という目的は、結果的に「家族を救う」ことにつながっていく。
重一郎が不倫相手の女性にキスをされた直後殴られるシーンは、「喜劇」であると同時に「悲劇」でもある本作をよく表していると思った。
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