エクストリームマン

美しい星のエクストリームマンのレビュー・感想・評価

美しい星(2017年製作の映画)
3.8
自然が美しいのではなく、自然を美しいと感じるんです、人間が。

タイトルが出るまでのレストランの場面が素晴らしく、冷めた家族関係と1ミリも美味そうに見えない前菜、それにトドメのバースデーソングが地獄のよう。

ある日突然自分が宇宙人であると覚醒する家族。環境問題によって滅びかけている地球を救うことに邁進しだす“火星人”の父:重一郎(リリー・フランキー)、ラブホ代わりにしようとしたプラネタリウムで水星人に覚醒する息子:一雄(亀梨和也)、そしてストリートミュージシャンにハマって金沢まで追いかけた結果、自分が金星人だったことを知る娘:暁子(橋本愛)。滑稽でありながら、あまりにも必死で真剣な彼らの姿に笑いながらも目が離せなくなる。

原作からアレンジされた脚本では核の危機が環境問題に変えられていて、「間違ってないのかもしれないけど、そのストレートすぎる主張の仕方では誰もついてこない」という問題として、核よりも寧ろ温度感が丁度いい。また、原作では木星人として覚醒する母が覚醒しない=地球人であることも、家族の物語としての側面を補強する。その母がハマるのが所謂ネズミ講な「美しい水」であるところがとてもよい。金沢の金星人を名乗るシンガーソングライターや「美しい水」など、「で、結局本当はどっちなの?」を拒絶するように、どちらとも取れるような、そしてどちらでもあるかのような描写が絶妙。それでも、ラストはあの滑稽で真剣な一家に対する愛が感じられた。

今回シンガーソングライターの曲として平沢進の「金星」が使われているけど、路上でいきなりあれ歌ってるの聴いたらそりゃ好きになるよなと、勝手な説得力を感じたり。

宇宙人といえば、佐々木蔵之介の宇宙人感が最高で、アイツだけはこの映画の中で唯一「間違いない」と確信できるような存在感だった。

何度も観たくなる。