幕のリア

メットガラ ドレスをまとった美術館の幕のリアのレビュー・感想・評価

3.8
「最近なんかおもしろいの聴いてる?リアルタイムで」
そんな質問をしたり、されたり。
10代ならまだしも、今やそんな会話をキッカケに新しい音に触れる事は殆どなくなってしまった。
ジャンルの多様化と細分化で誰もが知る楽曲は年々減り、ジャンルの深化はマニア向けの遊戯になっている事もあるだろう。

映画はどうだろう。
もはや完全なるオリジナル性はどんな作品にも望めないしオマージュ探しが目的では無いものの、そんな戯れを楽しむ事もある。
技術的進歩により、より低予算で愚にもつかない作品が増えているようでもあるし、不必要な技術に浪費を厭わない作品も多い。
とは言え、2時間前後の暗闇のエンターメントは手軽かつ多角的な楽しみに溢れているので、やめられる訳ない。

昨年最も妖しい光を放った映画作品は「ノクターナル・アニマルズ」だったと思う。
映画的文法も踏まえつつ、かつてのデビット・リンチ級衝撃を与えてくれた余韻が長く続く怪作。
才気溢れる表現の拘りが圧倒的で、映画屋には真似できないトム・フォードの服飾デザイナーにとどまらないバックグラウンドに感嘆するしかなかった。

前置きが長くなりました。

美術界では軽視されがちなファッション芸術を長らく見守ってきたニューヨークメトロポリタン美術館。
彼らが毎年5月に行うメットガラという資金集めを目的とした祭典。
その華やかで煌びやかでスノッブな世界を捉えるだけのドキュメンタリーかと思っていましたがさにあらず。

近年行われた展示会の進捗も見れ、その展示会と映画の関係性には興味が喚起されるし、あっと驚く大物も登場。

また、お仕事映画としても素晴らしい。
緊張感溢れる議論やインタビューでその場凌ぎでない思考が言語化され理解される対話の様が痛快とも感じる。
最近着手した自分の新しい仕事への取り組み方にも大いに影響されてしまいたい。
まずは格好から(^^;;

ストーンズの"UNDER COVER OF THE NIGHT"
に乗せて華やか過ぎる開幕。
JPゴルティエの解説を聞きながら一部展示会を見れるのも楽しい。

被写体、撮影者共に、意識の高い仕事振りに感服。
幕のリア

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