MikiMickle

T2 トレインスポッティングのMikiMickleのレビュー・感想・評価

T2 トレインスポッティング(2017年製作の映画)
4.2
舞台は前作同様、スコットランドのエディンバラ。
イギリスであるものの、貧困がまとわりつく町。
そこで青春時代をおくったレントン、シックボーイ、スパッド、ベグビー。
ドラッグにまみれ、どうしようもないこの生活から抜け出せ‼人生を選べ‼‼と、一大犯罪を犯 すというのが前作。

そして、20年後。あのレントンが、抜け出したレントンがエディンバラへと戻ってきた‼
町は、EUの流れで東欧からの移民も増え、変化を感じるものだった。
しかし、人はそう変わるものではない。
ヘロイン中毒だったシックボーイは、コカイン中毒になり、東欧出身の若い彼女ヴェロニカと共にしがない恐喝で生計をたて、叔母から譲り受けたバーで売 春宿を作ろうとしている。
スパッドは、手にした大金を全て麻薬につぎ込んだために中毒が加速し、家族とも離ればなれ。一人、希望もない絶望の人生を送っている。
荒くれもののベグビーはある犯罪により禁固20年で刑務所にいるが脱獄。
レントンもまた…
その4人の人生がまた混じり会う。愛憎を持って。

人は変わらない。いや、変われないのだ。
変われないけど、変わる。変えられる事もやはりある。
前作はchoose your life。未来を選べというテーマだった。
時代は変わり、選べない未来、選べる未来から、今作は、選ばされる未来へと変わった。
20年前に彼らが選んだ人生とは…


大概の続編映画は失敗作が多い。
が、これは、陽気さの中にある悲壮感も健在、ハラハラさせる部分も健在、エディンバラという土地の背景や時代の変化も感じさせられ、かつ前作のオマージュ部分もかなりあって満足させられ、音楽的センスとチョイスも、スタイリッシュな映像も健在で、成長しないダメ大人の彼らに変な安心感と笑いと痛みを貰い、かつ変わらないものの大事さを感じ、心地よい後味を残してくれた事だけはまず言っておく。素晴らしい続編であったと思う。むしろ、エモーショナルな部分では前作を上回ると思う。

まず、前作の印象的なオープニングシーン。Iggy Popの“Lust For Life”にのせて颯爽と走るレントンたち。今回もあの曲にあわせて走る‼‼走るレントン‼しかし、ウォーキングマシーン。初っぱなからこのトキメキと、見たくなかった現在の状況の対比にやられた(笑)
あのかっこよかったレントンたちは、今やハゲのオッサンたち… シックボーイとスパッドの頭の劣化はなかなか染みる。
が、前述したように彼らは変わっていない。例え、お互いの呼び方が変わっても、シックボーイがショーンコネリーについて熱く語らなくなってしまっても、過去に生きる男たち。
過去について熱く盛り上がるレントンとシックボーイを見ながら呆れるヴェロニカ。過去の事など等の昔に捨てて出世している元カノのダイアン。現実を見つめるスパッドの妻ゲイル。この男女差がまたリアリティーがあり、痛々しくも笑える。

そしてこの映画は、前作でピエロ的存在していたであったスパッドの映画だ。そこも素晴らしいと思う。レントンではなくスパッド。おバカだが気の良いスパッド。オッサンになってもクズジャンキーのスパッド。その彼の映画だ。だからこそ、切なさといとおしさで涙がこみあげる。彼の稚拙な文字で書かれる過去の回想もまた…
今回はベグビーに対しても違う感情を持てた。 なぜ彼があれほどまでに暴力的なのか…本当はどういう人間なのかは、レントンと対面するシーンで流れるFrankie gose to Hollywoodの“Relax”でわかる。
また、トレインスポッティングという題名もベグビーの父親との関係があり、クレイジーすぎる彼の哀愁を感じてならない。彼は“選べなかった”人生だったのだ…

ダニー・ボイルの映像センスとテクニックと音楽センスはやはりスタイリッシュだった‼‼under worldの“ボーン スリッピー”がまた違う形で流れたり、便器やレントンの部屋、過去の名シーンが現在と重なったりと、単純にテンションがあがる反面、過去との対比を感じさせ、痛々しさも感じる。
が、年をとってもやはり、彼らはかっこよかった‼ダメ大人でも、禿げててもかっこよかった‼‼ズルい‼ ファッションもやはり面白く、フレッドペリーやアディダス、ダサいのにかっこいいジャージ。当時と今作を比べてみるのも楽しかった

さて… 20年という月日は残酷なものだ…… が、その20年で変わらないものと、些細な変わったもの。それらが胸を刺す。
裏切りと憎しみと、根底にある絆と友情。切る事の出来ない根底にある拠り所。親と子の関係。拭いきれない後悔と、自負と贖罪。過去、未来、現在。チャンスと裏切り。希望。
人は過去に囚われる。少なからずも。あの時こうすれば、と思う事もある。
ラストの“lust for life”。“人生への欲望”。涙がでた…choose your life。と、背中を押された。どこからだって、またスタートできる。

本当に、この4人の続編をこんなに素晴らしい形で作って見せてくれた事に感謝したい‼
MikiMickle

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