SANUKIAQUA

インディ・ジョーンズと運命のダイヤルのSANUKIAQUAのネタバレレビュー・内容・結末

4.8

このレビューはネタバレを含みます

観るのを楽しみにしながらも
いざ劇場に入ると胸が締め付けられる
ような気持ちになってしまい
オープニングからワクワクというより
ハラハラするというか複雑な気持ちで
見入ることになりました。
このインディ・ジョーンズ
劇場5作目が賛否両論あり
観る人を選ぶのは理解できます。
過去の作品のようにインディが
飛び、駆けて、女性とラブロマンスを
繰り広げてというヒーロー然としたものを
求めた方は期待はずれということでしょう。

インディとはすでに最後の聖戦で
お別れし、さらにクリスタル王国での
マリオンとの結婚式で
幸せなエピローグまで
終えてしまっていました。
それに加えてさらに何かを描く意味がある
としたらそれはもう…
インディの死、そのものしかないはず
だったのです。

ハリソンフォードが今作を最後にすることは
彼の年齢的にもそうなることが必然です。
仮に他の役者でリブートしたり
他の役のサイドストーリーが展開されても
僕は全く興味が湧きません。
昔、若いインディを描いたテレビシリーズが
放送されていたけれど、
初見でこれは違うと見なくなりました。
ハリソンフォードこそが
インディ・ジョーンズ
それがわかった瞬間でした。

子どもの頃からの、虚構とはいえ
憧れのヒーローの死を目撃しに行くのは
そこに意味があるとは確信しつつも
つらい気持ちもありました。
同じハリソンフォードが演じたヒーロー
スターウォーズのハンソロの死とは
全く別次元の感情でした。

テレビの洋画劇場で初めてレイダースを観て
トラックでのアクションシーンで
インディ・ジョーンズの虜になり
中学生の秋の台風の夜に
倉庫のトタン屋根が飛びそうだと
団地の大人たちが騒いでるのを横目に
魔宮の伝説のテレビ放送にかじりつき
それをテープに録音して
翌日から台詞を覚えるくらいに
リピートしました。
念願の映画館でのインディ・ジョーンズ
デビューとなった最後の聖戦は
お小遣いを前借りしてまでして
三度映画館に通いました。
大学に入学すると、あの帽子を買い
目深に被って通学しました。
結婚式のスピーチでも父がインディを
取り上げたほどです。
レイダースから40年がすぎ
自分もそれ相応の年齢になると
若さで突っ走ったその先を意識します。
なのでインディが年老いた自分と
どう向き合うのだろうということに
興味を強く持ちました。

定年を迎えたところから始まり
リタイアしていたインディが
徐々に冒険の世界へと引き戻されていく。
心踊らせてきたレイダースマーチは
なかなか流れない。
移動の時の地図に赤線が引かれるのも
なかなかでてこない。
NYのシークエンスでは
インディの中で湧き上がる冒険心が
ないのがよくわかる。
それはモロッコやシチリアに
舞台が移ってもかつてのように
最高潮には盛り上がってこない。
時折断片的に戻ってくる。
その時だけレイダースマーチが流れる。
時代は宇宙、過去より未来
自分はもう用無しで考古学も
世間では誰も見向きもしない。
さらに彼には冒険よりも
心に占めていることがあった…

かつてインディが持っていた
野心や冒険心は今回の相棒が
全て担っているのです。

クライマックスのところで
インディがある場所に残りたいと言ったとき
バックトゥザ・フューチャーの
ドクが西部開拓時代に残りたいと
言ったのを思い出しました。
それをひっぱたいて
現実に引き戻したのが良かった。
時の流れとそれを受け入れて
変えられる未来を選ぶことが大切でしょう。

過去の作品を観ていると
オマージュを捧げているシーンが
いくつかあったのですが
最後のキスシーンは
その最高のものであり
ちょっと涙が出そうになりました。

この作品はいわばずっとインディと共に
年齢を重ねてきた方々への
メッセージだと思います。
ただ一作目から見るのでは
湧いてこない思いがあると思います。
老いたヒーローなど見たくない
という方もいるでしょう。
でも本当のヒーローは老いても
ヒーローです。
こうした姿を見せてくれたことに
感謝します。
SANUKIAQUA

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