このレビューはネタバレを含みます
緑豊かな山々。粗大ゴミが散乱するキャンプ地。そんな景色の中を行く二人の男。その間には、埋められない溝が広がっている…。
ケリー・ライカート監督の作品は初鑑賞。
非常に浅い被写界深度、焦点の定まらない手持ちカメラなど、主観に入り込みつつ淡々としたドキュメンタリーチックな映像で、現実味を持たせている印象だった。
二人の間に横たわる痛み。戻れないあの頃、戻らない関係。そんな痛みも、周囲に広がる自然と、穏やかなギターの音色で、まるで優しく包み込まれていくように感じた。
終盤のシークエンスでは、車を降りたカートのその後が描かれる。ちっぽけに見えるその姿は、ゴミゴミした街の中では浮いているように見える。ただそこにある寂しさが如実に映し出されていた。