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彼らが本気で編むときは、のKUBOのレビュー・感想・評価

彼らが本気で編むときは、(2017年製作の映画)
4.5
母性をまとった生田斗真の演技に圧倒された。2月3本目の試写会は「彼らが本気で編むときは、」。

生田斗真が性同一性障害の役をやると聞いた時から期待は高まっていた。否が応でもエディ・レッドメインを超えられるか(?)という思いで試写会場へ。ところが、今回の生田斗真演ずる役柄は、自らの性同一性障害に悩む役柄というよりは、そこを通り越して「家族」を持ちたい、「母」になりたい女の役柄。子どもがいっしょに暮らし始めた段階で「チョコレート・ドーナッツ」が頭をよぎったが、優しい優しい「チョコレート・ドーナッツ」だった。

性同一性障害で身体の工事は全部終わってるリンコさん(生田斗真)は介護士として働いている。優しいボーイフレンドのマキオと暮らすふたりの部屋に、マキオの姪っ子トモ(柿原りんか)11歳が転がり込んでくる。トモは母とのふたり暮らしだったが、ネグレクトの末に母親が失踪してしまったのだ。かくして、3人の暮らしが始まるが…

本作では他にも、トモの同級生でやはり性同一性障害に悩む男の子や、認知症で介護施設にいるマキオの母など様々な個性を持つキャラクターが登場するが、その誰もに優しい目で愛情が注がれる。性同一性障害に悩む子どもを持つふた組みの親子が描かれるが、その育て方の違いこそ、監督の伝えたかったテーマだろう。

生田斗真はもちろんだが、トモ役の柿原りんかの自然な演技もすごい! 最近の子役は本当にレベルが高いが、柿原りんかはオーディションを経て本作が映画デビュー。これから要チェックな才能だ。

見終わって、本当に優しい、ケチの付け所のない素晴らしい作品。この完璧な脚本は誰?と思ったら、監督も脚本も「かもめ食堂」の荻上直子5年ぶりの新作だった! そりゃ優しいわけだ。でもずいぶんはっきりとしたテーマを持つ作品を撮るようになったなぁ。

生田斗真は本作の後に「土竜の唄 香港狂想曲」の撮影に入ったと言う。なんという振り幅の大きさ! すごい俳優だ。

改めて「生田斗真にハズレなし!」
全映画ファンにオススメします。
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