もも

彼らが本気で編むときは、のもものネタバレレビュー・内容・結末

彼らが本気で編むときは、(2017年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

叔父のトランスジェンダーの恋人を母親に捨てられた姪が編み物を通して理解していく内容なのかと思っていたら、どちらかというと母親と子どもの話だった。
父性的なものはほぼ皆無で、ネグレクトも介護問題もイジメも思春期のセクシャルな思考もトランスジェンダーに関してさえ綺麗に綺麗に描かれていて、現実はもっと色々とぐちゃぐちゃ汚いんだと思うけどもう全部リンコさんが覆い隠してしまったかのように綺麗で、そしてそこがすごく歪で、その歪さで成立している映画だった。
その歪さの合間に自分で何かを思ったり、考えたりする空間があるのは、とてもいい映画だな、と。
細々と色々はあるけど日常は進んでいき、何も解決しない、解決しないけれどきっと解決に向かって歩めるんだろうな、という邦画らしい映画。

11才というまだ赤ちゃんみたいなところもあり、妙に大人びてるところも素直さも生意気さもそれを感じている年ごろの子が演じられるのはとても不思議なんだけど、子役二人は本当にうまかった。

何より生田斗真がすごかった。
最初出て来たときは「女装している」としか見えなかったのに、途中からトランスジェンダーの苦しみの描写が出てきて「あ、トランスジェンダーの人なんだった」って思い出すというか。
母親になりたい、でもなれない女性にしか見えなかった。
リンコさんとリンコ母からいってもう少しファッションセンスはあってもいいのでは…って思ったけど、編んでる毛糸もセンスなさそうだったのでマキオだけじゃなくてリンコさんもあんまりファッションセンスはないのかもしれない…。

トモの母が迎えにくるシーンでリンコさんがバカみたいなワンピースを着ていたのが、この映画が歪さをすごく表しているのではないか…と思ったけどどうだろう。

トモ、リンコさん、マキオの家族はトランスジェンダーの問題抜きにしても「普通」ではない家族だけど、優先順位を決められない母親のいる家族は、女に走って帰ってこない父親とその父親への憎しみを編みこんだニットを着せる母親がいる家族は、戸籍と血縁があるから「普通」なのか。
「普通」ってむずかしい。
思えばリンコさんは母親から親としてまっすぐな愛情を注がれたから、トモに対してもまっすぐな親の愛情を注げたけど、トモの母は自分の母からそうしてもらえなかったからトモに親としての愛情をうまく注げなかったんだよなぁ。
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