賽の河原

エル ELLEの賽の河原のレビュー・感想・評価

エル ELLE(2016年製作の映画)
3.8
当然のことながら英語は全然できないですけど、普段英語の映画を字幕で観ても違和感ないのに、フランス映画を字幕で観ると、映像見るのか字幕を読むのかスゲー混乱したっていうね。
そういうフランスつながりで安直ですけどカミュの『異邦人』のような、明らかに理性は働いているんだけど世界と向き合う・対峙するというような「不条理」をめぐるお話のようにも思えますし、性的な、あるいは人間関係含めた様々な関係における「倒錯」のお話にも思えますし、結構面白かったですね。
正直、フェミ的な文脈でこの映画を論じるのはちょっと頭悪い気がしますね。
で、上に挙げた「不条理」とか「倒錯」って、テーマとして映画や文学にされることってよくあるわけですが、作り手の力がないとすぐに「こいつら頭おかしいだろ」とか「メンヘラかよ」みたいな渋谷アップリンク系映画になったり下北沢文学になりやすいわけです。
その意味で、本作を観ると、「いやー、これが日本映画だったら耐えられんかもなあ...」とか想像するわけですけど、この映画のバランスは本当にギリギリのところで「いいルック」を保つことに成功してるんですよね。
そのルックを担保しているのは言うまでもなく、イザベル・ユペールの卓越した演技ですよ。ポール・バーホーベン、ココアみたいな名前の監督ですけど79歳でこんなにフレッシュな映画を撮れるの、ホント凄いっすね。
ラストシーンの手前の奥行きたるやもう...。
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