映画漬廃人伊波興一

オクジャ okjaの映画漬廃人伊波興一のレビュー・感想・評価

オクジャ okja(2017年製作の映画)
4.3
私が歩んできた(映画路)には時として、こんな理由で否定できない作品も出現いたします。ポン・ジュノ「オクジャ okja」

映画を観続けていれば、偽りの想念と余人の目を瞞着する情報を昼夜分かたずに運ぶ奇妙な路を歩いている錯覚にとらわれる事があります。
どんな路でも時々は舗装し直さなければならぬ時期がある筈。
ですが、そんな時に限って日没の真っ赤な光を放つような作品に出会ったりします。

本来は舗装の修正時期なのに、その日差しのおかげで路面だけは、完成仕立ての高速道路よりも奇妙に光ってしまうから始末に負えない。

本当は隠しておきたいのだけど案外メチャメチャ血ィ騒いだり、さめざめと泣いてしまったりする映画がどなた様にも一本や二本存在するにはそのためです。

積極的に推しているわけでもないし、ことさら好んでるわけでもないのに、結局はその作品の殆どを観ていた、という監督がどなた様にも一人や二人いるのもそのため。

同時にさして重要でもない監督たちが、良心的かつ偏執的な映画好きの心を一時期に掴んで大袈裟な名声を得てしまうのもやはりそのためです。

路面から異様な光を浴びる作品を観れば、当然輝かしいその監督の未来を感じられ、前後左右から警笛と罵声を浴びせられながらも、少しも動ずることなく堂々とその作家の軌跡を追っていくのみ。

時に分裂の始まりに過ぎなかった、と後に気づき、やはりあの時きちんと舗装終生しておけば良かった、と後悔することもままありますが、意識的である、ないに関わらず誰もがそんな不定の足形を積み重ねて映画術を読み解く力を備えていくものだと思うのです。

一本の映画を語るのに前置きが長くなったのは、私個人が歩んできた(映画路)にかすかな陽炎を昇らせた「ほえる犬は噛まない」という映画を撮った、風貌からしていかがわしそうなポン・ジュノという監督の「殺人の追憶」も「母なる証明」「グエムル~漢江の怪物」も「スノー・ピアサー」等どれもこれもが、
擁護したい、
笑殺したい、
それどころか黙殺したい、
かと思えば誰かに推奨したくもなり隠匿したくもなる、
という未だに前後不覚の酔っ払いのような足取りから立ち直れないからです。

ちょうど一年前、配信サイトネットフリックスで観た彼の「ОKJA オクジャ」を観直しました。

やはり、例え後々に後悔したとしても今はこの映画への苦い支持を表明したい。という思いに揺るぎはありませんでした。

その理由は、ミジャ、オクジャと一緒に帰ってきた子ブタは何と名付けられたか?気がかりで仕方ないからです。そんな理由でどうしても否定できない作品が私の映画路には時々、出現いたします