ナガノヤスユ記

オクジャ okjaのナガノヤスユ記のレビュー・感想・評価

オクジャ okja(2017年製作の映画)
3.5
かなり悪意ある見せ方だなとは思いますが、こういう意地の悪い映画はどうしても嫌いになれない。
ポール・ダノがオクジャに振りおろしてしまった攻撃を、ミジャが素手で受けとめる一瞬の演出が、実はとても大事だったと思う。

食肉生産の在り方については近い未来、多分スーパーピッグではないと思うけど、動物性たんぱくの完全なる代替が発明されたとき、その時こそ改めて人類の尊厳が再び問われる日が来るのでしょうね。

僕は酒もタバコもやるし、大麻だって時さえ来れば全然抵抗ないけど、自分がこんなにも毎日のように何らかの肉を食らうことに対して、一抹の後ろめたさもないと言ったら嘘になる。
なんならホルモンとか馬刺しとかアホほど好きだし、スーパーに行けばついつい安い肉や卵を買ってしまう。舌バカなので、安かろうと味が悪いと思ったことはほとんど無いが、安さの理由は大概ひとつだ。劣悪な生育環境は想像に難くない。
ヴィーガンやベジタリアンになることが答えかと言われたらそうではないと思うし、この映画の本意とも違ってくるだろう。
しかし、明らかにバランスを欠いた現代世界の食糧事情に、真っ当な疑問を抱いている人間が一体どれだけいるだろう。
保健所の犬猫の死に涙まで流せる人たちが、工場で次々屠殺されていく牛豚の命にてんで無関心なのはなんなのだろう。
その運命はどこで違ってしまったのか。
資本主義が骨の髄まで染み込んでしまった近代以降の人々はきっと死ぬまで気づかなかったろうが、人間がこの星の生態系において、万年中位の一生物だった時間は、有史よりもずっと長い。
人間は紛れもなく地球史上類を見ない大量殺戮生物であり、これはまったくの異常事態なんだよな。
生命の皮肉、自然の不整合。
なんでもかまわないが、そんな皮膚のぶ厚い面構えで優しさを説かれても、まるで響かねえのだわ残念ながら。