kanegon69

マンチェスター・バイ・ザ・シーのkanegon69のレビュー・感想・評価

4.0
心の再生を描いた映画や本は多いですが、この映画は乗り越えられない辛さ、あまりにも過酷な過去に対処しきれずに荒れる主人公の心象をとても繊細に描いていたと思います。

大好きな兄を失い、故郷のマンチェスター・バイ・ザ・シーに駆け付ける、弟リー・チャンドラー。息子のパトリックはまだ16歳。後見人として遺書で指名されるが、リーは戸惑い、なかなか素直に受け入れられない。甥のパトリックをボストンに連れて行こうとするが、パトリックは現在の生活から離れたがらず、しかも父の死をまだ受け止め切れていない。悩むリー。しかし、実はリーにはもっと過酷な過去があった。

主役のケイシー・アフレックの演技が素晴らしかったと思います。自分を許せない心情、苦悩する姿、兄の死や自分の家族の喪失に乗り越えられず、苦しむ主人公の荒れすだんだ心、それでもどうにか甥の希望通りにしようともがく姿、ハッピー・エンディングではないけれど、それも人生かもしれない。そんな余韻が残る、いい映画でした。
kanegon69

kanegon69