怨念大納言

ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツの怨念大納言のレビュー・感想・評価

4.3
資本主義経済の「身も蓋もなさ」を生々しく描写した傑作。

「大企業の上に立つ者には、背負わなければならない十字架がある。そこに上りつくまでに、多くの友人を失うことになる。」
レイ・クロックの「成功はゴミ箱の中に」という自伝に書かれていた彼の言葉。

この言葉、この映画を見れば痛い程わかる。
50代でフランチャイズビジネスを始め、マクドナルドという外食チェーンの帝国を作り上げた帝王。
ノーマン・ビンセント・ピールの「積極的考え方の力」、ここに登場する「執念と覚悟」を支えにアメリカンドリームを夢見る男。恐ろしい事に、トランプ大統領もこの作者好きらしい。
レイクロックは帝王、つまりはマクドナルドの創業者であるものの、マクドナルドのビジネスの根幹のアイデアは全てマクドナルド兄弟によるものである。結果として、レイ・クロックは店を乗っ取った。

執念と覚悟によって金儲けに命を懸けるレイクロックと、職人気質のマクドナルド兄弟は度々衝突する。

ビジネスには「サイエンス」「アート」「クラフト」の三要素があって、レイクロックはまさに「サイエンス」=合理的金儲けの権化。「アート」と「クラフト」の結晶である初期のマクドナルドを、拡大と利益の為の道具に堕とす。
マックシェイクに怪しげな粉末製品を作る下りなんて分かりやすくて、実態・本質はどうでもいい。客にバレない程度なら、不味くても安くあるべきなんだろう。

現状、誰もが安く素早く「それなりに」美味しいハンバーガーを食べられる。
その恩恵を享受しているのは間違いなくレイクロックの功績であるが、本当に良かったのか。

コンビニ、牛丼、ファッション、居酒屋。
フランチャイズの業態はありがたいけれど、何処もブラック企業の代名詞である。
If my competitor were drowning, I'd walk over and put a hose right in his mouth. Can you say the same?
ライバルが溺れていれば、歩み寄ってから口にホースを突っ込む。
これらの覚悟があり、また、実行してきた人間だけが、資本主義経済の成功者かも知れない。

レイクロックは「店を乗っ取る資本主義の権化」と「50代にして夢をあきらめず成功を掴んだヒーロー」という二面性を持ち、彼のサクセスストーリーでもある為エンタメ性も高い。
そして、格差は広がり続けるこの現代で、どう生きるべきかを深く考えさせられる。
怨念大納言

怨念大納言