MasaichiYaguchi

ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

3.9
この映画の舞台となっているのは、当時ヨーロッパで最大の規模を誇るワルシャワ動物園。
動物園というと、私の勤め先の近くに上野動物園が有り、今年ジャイアントパンダの雌の赤ちゃん香香が生まれ、12月の一般公開を今か今かと待ちわびる人が大勢いると思う。
子供たちが成人して動物園に行く機会は無くなったが、動物園は家族で訪れて、子供に多種多様な動物を見せたり、触れさせたりする学習の場である。
ワルシャワで動物園を営むヤンとアントニーナの夫妻は、自分らの子供と同様に園内の動物たちに愛情を注いでいる。
1939年、家族連れで賑わう夫妻の動物園にも軍靴の音が近付き、遂にその秋、ナチスドイツがポーランドに侵攻する。
戦時下における動物園の惨状は、上野動物園を題材とした絵本「かわいそうな象」や短編漫画「トンキー物語」で描かれているが、ワルシャワ動物園もドイツ軍の侵攻で同様なことが起きる。
更にはワルシャワを中心にナチスのユダヤ人狩りやゲットーへの封じ込めが始まる。
それから先に待ち受けるユダヤ人たちの言語に尽くせぬ悲劇を我々は知っているが、夫妻はそれを見越したかのように友人を救ったことを切っ掛けに、支援団体のアシストも受けながら、動物園という“利点”を活かしてゲット―にいるユダヤ人たちを救い始める。
当時、ナチス支配下のワルシャワは、ユダヤ人を助けたり、匿ったら即刻死刑という状況下にありながら、血の繋がりもなく友人でもない、そして人種さえ違うユダヤ人たちを、何故、家族の命を危険に晒してまで夫妻は救出し続けたのか?
それは夫妻の「正しいことをする」という確固たる信念と、動物園は命の大切さを学ぶ場所という思いからだと思う。
12月からのパンダの赤ちゃん公開で上野動物園は来園者でごった返すと思うが、本作を観て久し振りに家族で訪れたくなりました。