ガーコ

ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命のガーコのレビュー・感想・評価

5.0
これがノンフィクションだとは…。

動物たちをこよなく愛したアントニーナの慈悲深い心に感動しました。

綺麗なドレスを着ていても、象のお産で子象が命の危機になると、汚れなんて気にせずドロドロになって子象を助けます。

動物たちを家族のように扱う、彼女の深い愛情に癒されました。

ですが、感動の気持ちはあっという間に消え失せてしまいます…。

徐々に戦争が激しくなると、ポーランドはドイツの襲撃に遭ってしまうのです。

ワルシャワ動物園の動物たちも、ドイツ軍の攻撃により、たくさんの命が奪われてしまいました。

彼女がこよなく愛してきた沢山の動物たちが犠牲となる現実に、涙が止まりませんでした…。

非力な動物たちの残酷な死に打ち拉がれるアントニーナと夫。

空っぽになった動物園に愕然とする中、夫の「この動物園を隠れ家にする」という一言が、沢山のユダヤ人の命を救うことになるのです。

夫の真面目な優しさと妻の真っ直ぐな愛情。

命を守ることに必死になる二人の姿に涙しました。

動物も人間も同じ生き物であり、かけがえのない大切な命。

自分たちの命の危険を顧みず、数多くのユダヤ人の脱出に協力した二人に拍手を送りたいです。


また、夫がワルシャワ蜂起のレジスタンスだったことに驚きました。

革命軍であったからこそ、彼が沢山のユダヤ人たちを匿っていたのだと思います。

動物を愛し守ってきた優しい夫が、戦争という悲劇によって人殺しに成り替わる現実は複雑な心境でした。

戦争さえなかったら、彼が銃を構えることもなかったでしょう。

第二次世界大戦の悲劇が一人の動物園の飼育員の生き方さえも変えてしまうと思うと、戦争は本当に恐ろしいです。



杉原千畝さんのように、多くのユダヤ人を解放してきた夫、オスカー。

彼の功績が21世紀の現代に認められ、映画化されたことに感動しました。

本当の英雄とは、命を守る人のことを言うのだと思います。
ガーコ

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