Inagaquilala

菊とギロチンのInagaquilalaのレビュー・感想・評価

菊とギロチン(2016年製作の映画)
3.9
4時間38分の長編作品「ヘヴンズ ストーリー」以来、8年ぶりに瀬々敬久監督が手がけたオリジナル作品。こちらも3時間9分の長尺だ。このところ、3時間を超える作品には(とくに邦画)、あまりお目にかかることはなかったので、ある程度の覚悟はして劇場に足を運んだが、それは見事に杞憂に終わった。自分のなかでは、観終わった感じは、2時間超くらいのものだった。それだけ、内容がバラエティに富んでいて、テンポも悪くなかったのだ。とにかく、この女相撲とアナキストたちの群像劇にすっかり入り込んでいた。

タイトルからは、ルース・ベネディクトの有名な日本文化論である「菊と刀」を想像してしまうが、「菊」とはどうやら女相撲の新人力士「花菊」のことで、「ギロチン」は大正時代に結成されたアナキストグループ「ギロチン社」を指すものだと認識した。それでも、このタイトルからイメージされるものは、ただの女相撲とアナキストたちの交流を超えたところにある、もっと時代や歴史など大きなパースペクティブを持ったものをも想像させる。「菊とギロチン」という、異質なものを掛け合わせて、青春群像劇を構想した瀬々監督の確信犯的な企画力に感心した。

物語は、新人力士である花菊とアナキストである中濱鐡の恋愛を中心に、その周囲の人間たちをも描いていくという群像劇になっているが、女相撲の一座とアナキストたちの交流は、どちらも世界から疎外された存在として描かれていく。花菊役の木竜麻生、中濱鐡を演じる東出昌大はもちろんのこと、登場する他の役者たちも個性派ぞろいで、これが長編にもかかわらず、飽きることのない要素のひとつだ。とにかく多重的なテーマが底に流れているため、何回も観たい作品となっている。ナレーションの永瀬正敏も絶妙な味わいを感じさせてくれる。