菊とギロチンの作品情報・感想・評価

菊とギロチン2016年製作の映画)

上映日:2018年07月07日

製作国:

上映時間:189分

3.8

あらすじ

大正末期、関東大震災直後の日本には、不穏な空気が漂っていた。 軍部が権力を強めるなか、これまでの自由で華やかな雰囲気は徐々に失われ、人々は貧困と出口の見えない閉塞感にあえいでいた。 ある日、東京近郊に女相撲一座「玉岩興行」がやって来る。力自慢の女力士たちの他にも、元遊女の十勝川(韓英恵)や、家出娘など、ワケあり娘ばかりが集まった、この一座には、新人力士の花菊(木竜麻生)の姿もあった。…

大正末期、関東大震災直後の日本には、不穏な空気が漂っていた。 軍部が権力を強めるなか、これまでの自由で華やかな雰囲気は徐々に失われ、人々は貧困と出口の見えない閉塞感にあえいでいた。 ある日、東京近郊に女相撲一座「玉岩興行」がやって来る。力自慢の女力士たちの他にも、元遊女の十勝川(韓英恵)や、家出娘など、ワケあり娘ばかりが集まった、この一座には、新人力士の花菊(木竜麻生)の姿もあった。彼女は貧しい農家の嫁であったが、夫の暴力に耐えかねて家出し、女相撲に加わっていたのだ。 「強くなりたい。自分の力で生きてみたい」と願う花菊は、周囲の人々から奇異の目で見られながらも、厳しい練習を重ねていく。いよいよ興行の日。会場には、妙な若者たちの顔ぶれがあった。彼らは「格差のない平等な社会」を標榜するアナキスト・グループ「ギロチン社」の面々で、師と仰ぐ思想家の大杉栄が殺されたことに憤慨し、復讐を画策すべく、この土地に流れ着いていた。「ギロチン社」中心メンバーの中濱鐵(東出昌大)と古田大次郎(寛 一 郎)は、女力士たちの戦いぶりに魅せられて、彼女たちと行動を共にするようになる。 「差別のない世界で自由に生きたい」――その純粋な願いは、性別や年齢を越えて、彼らを強く結びつけていく。次第に中濱と十勝川、古田と花菊は惹かれあっていくが、厳しい現実が容赦なく彼らの前に立ちはだかる。

「菊とギロチン」に投稿された感想・評価

たしかに3時間は長すぎるし、荒削りだったり目敏いカットもあるのだが、「今」を生きる私たちが手放してはいけない、見逃してはいけない瞬間が刻み込まれた、今観るべき、語るべき映画だった。

自由を奪われてきた彼女たち、社会への怒りをどうしようもできない彼ら、土俵の瀬戸際で生きるか死ぬかで戦いもがく姿は、苦しくも眩しい。言葉だけ一丁前で調子のいい中濱と、反して行動にうつすも実らない古田は、他人とは思えない。現代社会の窓のような作品だが、「菊とギロチン」のもう一つの意味がわかるあのシーンで放たれる愛の煌き!胸熱だ。

俳優陣も素晴らしかった!相変わらず東出さんの演技が上滑りしているが、映画が進むにつれて中濱という役にハマっていることがわかるのも面白い。

テアトル新宿
MatKen

MatKenの感想・評価

4.2
3時間の熱のある作品。激動の大正時代に格差と差別の中で生きていく人々の命がけの人生に胸が熱くなる。
女相撲とギロチン社という、当時実在したものをかけ合わせたところで更に興味深く感じさせる。映画界でも窮屈になってきた表現を瀬々監督が闘っているようにも思えた。
戦争というのは、戦時中だけでなく戦後それを経験した人間も狂気に導くものだとも感じた。
スクリーンの相撲の取組みも臨場感があり、見入ってしまった。社会的に弱い女性を親方が受け入れ、ずっと興業を真剣に考え、守っている姿も人間味ある役で好きでした。
こんな骨太の作品に出会えるから映画館通いはやめられない。
hrt2308

hrt2308の感想・評価

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ここ数年、メジャーな作品も多い瀬々敬久監督。この作品は瀬々監督が最も撮りたかった題材だがメジャー作品ではなく、自己資金や個人ベースの協力、宣伝資金はクラウドファンディングで集めたもの。ここまでして製作した作品全編に漂う熱気はただごとではない。荒々しいまでの物語の展開、描き方はかつてのATG映画を観ているようだ。

大正末期、徐々に軍部が台頭し世の中が息苦しくなりつつあった。
遥かな理想を追うギロチン社の中濱鐵(東出昌大)、古田大次郎(寛一郎)ら若者たち。しかし目の前の現実の前に為す術もなく、企業に言いがかりをつけ幾ばくかの金を巻き上げるのみ。革命は夢物語。警察は主義者として彼らを追う。

各地方を廻る女相撲一座には、元遊女の十勝川(韓英恵)や夫の暴力から貧しい家を飛び出し入門した花菊(木竜麻生)などの過去をもつ女たちがいた。その一座にも風俗を乱すとの考えで警察の目が光っていた。

ギロチン社と女相撲を組み合わせた物語は、周囲から弾き出された者たちが必死に生きようとする様は滑稽でもあり美しくもある。特に女相撲相撲の力士たちが警官隊と闘うシーンは感動もの。

在郷軍人会が我が物顔でのし歩き、朝鮮出身の十勝川を捕らえ暴力で「天皇陛下万歳!」を強要するシーンは、人間の愚かさが狂気となって噴出するこの作品で最も恐ろしく印象に残るものだ。

女相撲の座長の渋川清彦や嘉門洋子を初め力士に扮する女優が素晴らしかった。

3時間超の作品だが、最後まで濃厚な気の抜けない作品だ。
あらき

あらきの感想・評価

4.5
血湧き肉躍る……
確かに時代考証的なところとか手持ち多いとかその他多少気になったけど補って余りあるよさがあったんじゃないかと思います
めっちゃ意気込んでもなんだかんだで何にもしないモラトリアムな感じとか、どうしようもない鬱屈や怒りとか、時代問わず世の中の多くの人が多かれ少なかれ通過しているであろうところで、今日を生きているわたしはおもしろいと思ったな〜〜〜〜
長いししんどい。しんどいんだけど目が離せない。
強く生きていこうとする人ほどしんどい時代、今の時代もさほど変わりなく、思考停止が一番楽だけれどそれだけは絶対にしないようにしよう、と。
着眼点は良いと思いますし、熱量も十二分に感じましたが、いかんせん長すぎです。後半は明らかに中弛みしていたと思います。 設定が特殊ですので細かい部分で解説が必要な作品ですが、肝心の台詞が聞き取り難くこちらに伝わってきません。それゆえに登場人物に感情移入もしにくくてかなり損をしてるなと感じました。
今はまだ考えが纏まらないので一つだけ。
観に行って、良かった。


以後、思いついたことを断片的に追記していく。

◆第一の断片
7/7に公開されてから、ずっと観に行くタイミングを窺っていたのだけれど、なかなか新宿まで出られるメンタルが整わず、一月以上経って漸く。
序盤は正直「時空ジャーナリスト」の出てこない『タイムスクープハンター』の域から、如何に飛び出していくのだろうか?と思いながら観ていた。

◆第二の断片
以下、〈シナリオ〉2018年8月号掲載「菊とギロチン」シナリオより引用。
鐵の声「ヘイ有難うございました――か
 チェッ! 畜生! 覚えてろ!?
 二つにひとつだ!
 其の他に何も得るものはねえ?!」
U子

U子の感想・評価

3.5
アナーキストの方に興味があったのに、
いつのまにか女相撲の方にひかれていた。
アナーキストたちの演技がなんか
うわすべりしたような感じに思えてしまい、感情移入できなかった。
女相撲の方が、抑圧された世界で、唯一の光を求めているようで重みがあった。
アナーキストなら、エロス+虐殺の方がいいな。
こうん

こうんの感想・評価

4.1
ピンク映画でのデビュー作の仮題(というか原題)が「羽田に行ってみろ そこには海賊になったガキどもが今やと出発を待っている」なんだから、ゴリゴリの反体制というか無政府主義的なロマンを求める映画作家であるわけですが、そんな瀬々監督の映画を久しぶりに映画館に観に行きました。
その名も「菊とギロチン」。すげーな。

天下国家にドロップキックをぶちかます気負いの感じられる映画なんだろうなと褌締めていったんですが、あにはからんや、瑞々しくてやるせない青春映画でした。

正直なところ中濱鐵をはじめとした“ギロチン社”の面々の史実は知っていたし、キャラクターとして頭でっかちな要素も多くてちょいと退屈だったんだけど(でも東出君や寛一郎君は十分魅力的でした)、花菊をはじめとした女相撲の物語にはかなりグッと来た。

最近女性が蔑ろにされる描写の映画が多くて「またか」と思ったりもしたんだけど(女性がいじめられるのを観るのは映画として必要とはいえ、ツライのです)、寄る辺なき女性たちが反発したりしながら団結していく様に、超傑作「カリフォルニア・ドールズ」に通じる負け犬たちのONCE AGAIN的な生命の煌めきを感じたりしましたね、ボカァ。
特に「ピストルオペラ」でしか知らなかった韓英恵さんは素晴らしいと思いました。もっと彼女を銀幕で観たい。
他の女相撲のみなさんも、ひとりひとりのお名前はわからないけど、みな素晴らしい貌をしていらしゃった。
彼女たちが浜辺で踊り狂うシーンやラストの素晴らしい相撲甚句には涙が頬を伝いました。

本作における関東大震災直後から始まる大正末期の物語を、東日本大震災のあと平成が終わらんとする現在に重ねることは容易だけど、この100年を貫いている重くて硬いなにかが僕の身体や感覚や生活に抜き難く存在することをヒシヒシと感じられ、空恐ろしくもなりましたです。
在郷軍人会周辺の人たちなんかただただ憎らしいんだけど、それだけじゃない奥行きや社会の歪みが照射されたような精神性は、今現在僕の近くにいないこともないような、そんなリアリティでした。

それでもこの映画の中で弾ける、ギロチン社や女相撲の若い役者さんの身体性にこめられた自由への渇望に、いっとき心を洗われたような心持になりました、ありがとうございます。
(低予算なんだろうけど、がっちり作りこまれた画は素晴らしかったです)
みんな熱量の話をする理由がよくわかった。熱量が他を大幅に上回ってる。だから、事件が起きるまでの1時間くらいは熱の空回りを見せられて、けっこう退屈してしまった。動き出せばなんだかわからない躍動感で、もっていかれちゃうけど。
ぜぜさんって、恋愛の書き方というか、人が人をすこになっていく瞬間を書くのヘタかも、と改めて感じた。花菊はまだしも、三治勝虎のほうは心の動きが伝わってこない。照れ屋の度がすぎるというか。
人には、どうしても他人にはなかなかうまく伝えられない、心の奥底の真情がある、というのがぜぜさんに一貫する隠されたテーマのような気がするので、そういう意味では、情熱だけがはっきり見えて、真に伝えたかったことは、「いやわかるけどもっと上手に伝えてよ!」とじれったくなるくらいの伝え方でちょうどいいのかも。
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