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ウインド・リバーのMOCOのレビュー・感想・評価

ウインド・リバー(2017年製作の映画)
4.0
「私は運が良かっただけ」(ジェーン)
「いや、この辺りに運なんてない、都会とは違うんだ・・・。ここでは生き残るか諦めるか、それだけで、決めるのは自分の強さと意思だ。
 狼が襲うのは不運な鹿じゃない弱い鹿だ」(コリー)


 ワイオミング州北部のインディアン保留地の野生生物局のハンター・コリー(ジェレミー・レナー)は人里離れた山中で若い女性の死体を発見し部族警察署長のベンに通報し、FBIの到着を待ちます。
 インディアン保留地からの依頼だったことでFBI が派遣したのは新米捜査官の女性ジェーン1人でした。

 ジェーンは第一発見者コリーにスノーモービルで現場に連れて行ってもらい、コリーが土地と気候に詳しく、鋭い推察をすることから強力を要請します。

 遺体には暴行を受けた形跡とレイプ痕が見られ、裸足で走ったことによる凍傷があり、現場はもっとも近い民家でも4キロ以上離れていることから、レイプを受けて逃げ出したと推察できるのですが、FBIがインディアン保留地での捜査に時間を裂くことを嫌がるため、地元の検死官は殺人の疑いと書くことを拒み検死結果は極寒による肺破裂と窒息死と書かれ、内容の変更をしつこく迫るジェーンにベンと検死官は驚きます。
 
 凍死したナタリーは3年前に殺害されて犯人が解らないままのコリーの娘エミリーの友人だったのです。
 ナタリーの家を訪れたジェーン達は有力とは言えない情報を得て家を後にするのですが、ナタリーの父マーティンはコニーに復讐を頼みます。

 3人はマーティンからナタリーに恋人がいた情報を得、さらにコリーはナタリーの兄からナタリーの恋人は掘削所で働く白人のマットの名前を聞き出すのですが、内部規程でその情報を聞くことを拒みます。
 
 ナタリーの兄が寝ぐらにしている家の裏山にスノーモービルが通った跡を見つけたコリーはジェーンに見逃してはいけないと指摘すると、ジェーンをスノーモービルの後ろに乗せてスノーモービルの走行跡を追いかけ、そこに裸の男の死体を発見します・・・。

 男の死体を検死に回し、翌朝掘削所のマットに聞き込みを計画したコリーたちだったのですが、その夜のジェーンの報告で、事態は一変します。死体はマットだったのです。

 翌朝ジェーンとベンと警察官2人は掘削所作業員が寝泊まりするトレーラーハウスへと向かい、コリーは一人で死体の先に伸びていた走行跡を追いかけます。

 一行は掘削所の土地に入り、マットのことを男に訪ねると「3日前に彼女とケンカして、彼女を追いかけて出て行ってから行方不明・・・」と言われ「マットの部屋(トレーラーハウス)を見せて欲しい」と、トレーラーハウスに近づくにつれ掘削所の男が増えはじめ、警察官と作業員は一触即発のにらみ合いになり、トレーラーハウスの中からジェーンに向けての発砲を皮切りに打ち合いが始まり、数で圧倒する掘削所作業員は自動小銃まで持ち出し・・・。

 山頂を越えたところで麓に掘削所作業員のトレーラーハウスを見つけた時コリーは事件のあらましを察知します。
 そこにジェーン達の団体を見つけたコリーは、ベンに無線連絡をするのですが・・・。

 自動小銃の乱射でベンと警察官は次々倒れ、最初の一撃で被弾したジェーンがとどめを刺されようとしたとき、射的可能な位置を確保した害獣刺殺のために雪に紛れる白い衣装を纏ったコリーの初弾が発射されると反撃の隙を与えることなく掘削所作業員は次々と確実に倒れて行きます。
 
 トレーラーハウスにたどり着いたコリーは重傷のジェーンを手当てすると、一人逃げた男を追うように言われて応えます。
「連れてくることはできないが、いいか?」

 
 ナタリーは何故トレーラーハウスから10キロも裸足で走ったのか?
 その日、マットを訪ねてトレーラーハウスを尋ねたナタリーとマットに何が起きたのか?
「連れてくることはできないが、いいか?」コリーの言葉の意味は何なのか?それを許したジェーンの気持ちは?
 コリーが交わしたマーティンとの約束は果すことができるのか?
 死を覚悟して一人トレーラーハウスに残ったジェーンは?
 雪に覆われた限られた人達の町のサスペンスには名作があるのですが、この映画も中々の名作です。


「ネイティブ・アメリカン女性の失踪者に関する統計調査は存在しない。失踪者の数は不明のままである」・・・
 原住民(インディアン)は極寒の土地に追いやられ今もこんな生活をしている・・・。そんな側面を映画は教えてくれます。
 
 コリーを演じるジェレミー・レナーの上手さと、渋さが光ります。あらためてジェレミー・レナーて、素敵な俳優になりましたね。
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