木葉

ウインド・リバーの木葉のレビュー・感想・評価

ウインド・リバー(2017年製作の映画)
4.1
私の中でジェレミーレナー史上傑作で、今年ベスト3に食い込む勢いの映画。
ウィンドリバーとは、アメリカの北中西部に現存する先住民保留地のこと。
凍りつくような辺境の地で起こったサスペンスに、ヒューマンドラマを織り交ぜた重厚な告発ドラマになっている。
雪深く人里離れた荒地でネイティブアメリカンの若い女性の遺体が発見される。
検死の結果、何者かに暴行された後、ー30度の極寒の中、必死に逃げる途中に肺が破裂して吐血して亡くなっていた。そこから一気に物語が動き出すのかと思いきや、地元の部族警察も一人で、FBIからも若い女性一人しか派遣されない。主人公の地元の猟師ジェレミーレナーも協力することになる。
明らかに人手不足な中、悲しい現実が浮き彫りになる。辺境の地に追いやられたネイティブアメリカンの貧困、若者のドラッグ依存、犯罪、過去に何度も性犯罪の事件があったが解決されてないこと。
国や社会から見捨てられた土地で起きた事件は、人も土地も荒れ果て、孤立させ、そこに生きる人間そのものが苦痛や孤独に耐えて生きなければいけないことを痛感させられる。
人をもはや拒絶した土地、凍てつき寒々しく白い映像美の中で、声高にはせずに、エモーショナルなラストに向かいながら、作り手の静かな怒りを感じることが出来る。
娘を亡くした過去を持つ主人公コリー役のジェレミーレナーが娘を亡くした父に言った言葉が印象的だ。
‘二つの知らせがある。悪い知らせは娘は決して君の元には戻らないこと。良い知らせは事実を受け止め、苦しめば、娘がくれた愛も喜びも君の中で生き続ける。’
巧みな回想の挿入、緩急自在の妙、極めて抑制の効いた演出、雪深い山々をあるがままに撮り自然の厳しさをそのまま伝えるカメラワーク総てが秀逸だった。
傷つき、苦悩と葛藤、哀しみを抱えながらも力強く生きるジェレミーレナーの演技は観る者の心をしっかり掴んで離さない。
心震えて、言葉を失う力作だ。
木葉

木葉