改名した三島こねこ

ウインド・リバーの改名した三島こねこのレビュー・感想・評価

ウインド・リバー(2017年製作の映画)
3.7
これは非常に稀有な作品。稀有な物語ではないのだが、製作国がかの米国であるということや、白人至上主義のトランプ政権下で発表されたことを考慮すると、簡単には無視できない。

アメリカ映画でネイティブ・アメリカンだとか、黒人だとか、そういった存在は悪の象徴として描かれがちだ。魅力的な悪役としてではなく、排斥されるべき存在としての悪。
その根底には傲慢な選民思想と、その暴虐を正当化する欺瞞が跋扈している。これは表面的には払拭されているようだが、近年のレイシズムの隆盛を見ると、やはり白人国家の愚昧は根強いようだ。

しかし本作はその"排斥されるべき悪"というポジションが圧倒的マジョリティ側である白人アメリカンというのだから貴重だ。露骨なプロパガンダ的に描いているわけではなく、ただ立場を逆転させただけ。しかしそれだけで各々の登場人物の言葉に重みが出るのだから、やはりこれは製作されるべくして製作されたのだ。

ラストの雪原の一幕は物語的ではあるが、しかしネイティブ・アメリカンの迫害の歴史を加味するならばむしろあれこそが自然だ。白人系が弱きものなのではなく、あれだけ迫害されたネイティブ・アメリカンが並一通りの生命力ではないという、彼等の意思へのリスペクト。それこそ読み取るべきだろう。

そういえばあの雪原のシーンでタランティーノの『ヘイトフル・エイト』を想起したのだが、どうも白人系は雪原に弱いイメージ。というより弱いイメージが映える。例えばそれがロック様とかだと物理法則無視して雪原を横断してしまいそうだ。