undo

めぐりあう日のundoのレビュー・感想・評価

めぐりあう日(2015年製作の映画)
3.8
私が生まれた理由。

ウニー・ルコント監督。
実の親を知らずに育ったエリザ。
現在は夫と別居して10歳の息子と二人暮らし。
実の親を探しながら介護士の仕事をしている。

正直、自分と重なる部分があまりなかったので、そんなに入り込めなかった。
女性なら感じ方は違うのかもしれない。

主演セリーヌ・サレットが悩めるエリザを見事に演じる。音楽が地味だが良かった。

テーマについて。
養女として育ったエリザだが、義理の親から愛情を受けている描写はあるので、実の親探しにこだわる心境はアイデンティティを追い求めてのものなのだろう。

自分は何者なのか。そしてなぜ育ててもらえなかったのか。そういう心のしこりを抱えたまま、我が子を育てていかなければいけないというのは、落ち着かないものなのかもしれない。作品からもそういう重たさは感じとれた。

しかしながら、テーマ自体はとても前向き。
生まれ落ちたことに理由はある。
そのことを教えてくれる者が側にいないことは不幸かもしれない。ただし、側にいないというだけで、存在しないわけではない。

なぜだか、私の大好きな、有島武郎「小さき者へ」が思い出される。
その一節をもって締めとさせて頂く。

小さき者よ。不幸なそして同時に幸福なお前たちの父と母との祝福を胸にしめて人の世の旅に登れ。前途は遠い。そして昏い。然し恐れてはならぬ。恐れない者の前に道は開ける。
行け。勇んで。小さき者よ。
undo

undo