ちぇるごまる

淵に立つのちぇるごまるのレビュー・感想・評価

淵に立つ(2016年製作の映画)
4.0
予備知識なしでの鑑賞。
深田晃司監督作品。

不穏な空気。
プロテスタントの妻・父親の跡を継ぎ工場の仕事をしている地味な夫・オルガンを習う小学生の娘。
平凡な家族のもとに突然現れ、住み込みで働くことになった夫の旧い知人。
最近まで殺人罪で服役していたと本人から明かされ、当初戸惑う妻だったが、娘にオルガンを教え、寡黙な性格の彼に次第に好意を抱くように。
やがて浮き彫りなるそれぞれの闇。
待ち受ける残酷な因果応報。
そして、8年後、因縁めいた出会いにより夫婦は互いに再びそれぞれの闇と対峙せざるを得なくなる…。

まず感じたのは「淵に立つ」という秀逸なタイトル。
音・色の使い方で不穏を読み取らせ、どんどん観ている側を引き込む予想を裏切らない雰囲気にゾワゾワする。
ラストは後味が悪いが、個人的には好み。
役者陣が皆適役で、それぞれの心情を表現した演出・脚本もとても細やかで丁寧に感じた。
私たち人間は、心に光と闇がある以上、事情は異なれ本作の夫婦同様に可能性として崖っ淵に立たされることはあり得る。他人事ではない…。
個人的な欲望を優先した決断と行動は、後に必ずその代償を払うことになる。そして、大抵の場合は属する中の最弱者が犠牲になるということが分かりやすく描かれていた。
私にとって初の深田監督作品だか、西川美和監督作品が好きな人には相性が合うと思う。
ちぇるごまる

ちぇるごまる