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くたばれ!ヤンキースのニューランドのレビュー・感想・評価

くたばれ!ヤンキース(1958年製作の映画)
3.6
☑️『くたばれ!ヤンキース』及び『博奕打ち』『じゃりん子チエ』▶️▶️
忘れっぽくなって、チケットを押さえていた作品をやり過ごしてしまった。1分·1秒遅れた人は入れないと、エラく早くから駆け付ける私より年配の老人たちがリードを取ってルール決めした会場なので、急いでも開始10分でアウト。兎に角、当該作品を含む三本をDVDかBD素材で、TVモニターで楽な姿勢で観る。’50’60’80年代を代表する安心してしっかり楽しめる、肩の凝らない秀作たちだ。
題名はよく耳にしてたが、この際と、やっと観る気になった『~ヤンキース』。思いの他、低予算コンパクトの作品だが、要素的には、様々な一級品の最良の部分が組み合わさってる。前後左右·フォローと回り込む·寄りにカット移りまた対象に長く複雑に沿う·止まり対象をチェンジ等、のカメラワークの長い息·流動感はフェリーニの『81/2』等の映画史の頂点作品にひけをとらず、画面分割や複数強烈内容小画面取込み合成や·切返しやこまかくモンタージュ片叩込み·らのキレと弾力性の節度、粗末めセットながら悪魔の部屋やクラブ等の造型·色彩·照明は大胆で見事、テーマとフィットしたミュージカル·ナンバーらの動き·方向の魅力·魔力と統制感·個人芸は華やかさよりも特異な鋭さ、俯瞰め·退きめの試合光景はめ込みもしっかりしていて、かつ詰めの思わぬ(事態の)逆転シーン、フィクション·寄り入りがしっかりトリックを実現化している。内容も明るく軽めにみえて、メフィストが魂をいつしか失わせよう·自分のものにしようとして、対象とその周囲の善意·誠実に覆る、というしっかりダークな寓話にも成りきってて、なかなか見事。
セネタースファン高じて、悪魔の誘惑にのって若き強打者となってチーム参入·優勝へ驀進の、元々中年サラリーマン。しかし、彼は野球以上に妻·家庭を愛してて、魂を売らさんとする悪魔にクリスマス前に元に戻る等の留保事項を付け、嘗て世界史の有名人を操り世界の不幸を呼び起こし悦に入ってて、今度もと意気込んでた悪魔は、彼を妻から引き離す筈の手下の魔女にまで(彼の誠実さに惹かれ)裏切られ、焦る。そしてリミットを過ぎさせ、一生の魂の支配者となったつもりが、目的の優勝の懸かった翌日の試合の詰めで、操作を誤る。
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賭場の所作を細かく再現してるのがウリで、沢島·マキノらと共に、東映の任侠路線のレールを敷いた小沢作品はスクリーンで二回位はあまり状態の良くないプリントで観てるが、災難招き役も、とことん悪役も、間抜けに余計なもう一押しして、事態を決定的に悪化させる。間抜けにも見えるが、寧ろ人間味とタッチも隙間ない本なら素通りする柔らかな裏や斜めの世界まで、描写の手が廻って、あたりのいい好ましいフォルムとなっていて、存在価値がある。鶴田-若山·桜町·待田·山城·河津·河野らの懐ろでのやり取り。
全ては本分の博打でケジメをと、子分や近しくなった遊郭の店や娼婦の危機を救っていった男が、道を外れ·約束反古や暴力的殺人に走るを屁とも思わぬ一家に、遂にドスを抜く。そして相手側にわらじを脱いでた、同業で心通じて(「兄弟の杯を交わす」べき)た男とも対す事に(小池朝男をキャスティングがいい)。
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原作やTVシリーズはチョコチョコとしか観たことがないので、短時間に凝縮·割愛の部分が分からないけれど、ホルモン焼き屋きりもりのやり手だがしっかりデリケートでもある小学生のチエと、無神経の「抵抗力の塊」·ヤクザも怖れる·大まかで調子いい·正業にも就かず·娘の律儀さと家出中の妻のしおらしさは苦手の父テツがメインで、いまや表には出れないような半ばヤクザで人間たちの取り巻きや、頂上争いの剣豪的ネコらが絡む。背景·美術はともかく、キャラを描く線が安っぽいのが残念だが、強烈風土·個性らを扱う高畑演出は流石に心·心意気·気配りが、可笑しさを醸し出すくらいこもってて、90°他の角度の変えもキッシリ締まってる基本ベースに、急に極端なアップに移行の顔の力、ボケや俯瞰も入る縦の図、ミニラや寅さんらの大胆スッと参入、軽く脅かしてワクワクもするサービスの加え方が、偉ぶってなくていい。締めが両親の娘ら取り持つ鞘に戻り、でなく猛犬やテツより強い、ネコ2匹の親の仇討ちも兼ねた頂上決戦が続くのもよく、互いの意の汲み合いが魅了する。
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