ユースケ

ブレードランナー 2049のユースケのネタバレレビュー・内容・結末

ブレードランナー 2049(2017年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

ポストモダンを体現し、その後のSFの未来像を決定づけてしまったSF映画の金字塔【ブレードランナー】の35年ぶりの続編は、前作の「人生の価値は生き方で決まる」というテーマを描きつつ、「特別な存在ではない私たちがどう生きるべきか」というテーマを描いたエモーショナルな一本。
「人間とは何か?」とか、「記憶が人間を作るのか?」とか、小難しい話は後にして、ダッチワイフ(【ラースと、その彼女】より)をラブプラスに持ち替えたライアン・ゴズリングの捨てられた子犬のような演技に涙しましょう。

とにかく、主人公Kの名前が前作の原作【アンドロイドは電気羊の夢を見るのか?】の原作者フィリップ・K・ディックからの引用だったり、前作にも登場したブレードランナーのガフの折った羊の折り紙が前作の原作【アンドロイドは電気羊の夢を見るのか?】からの引用だったり、前作のおもちゃの友達しかいないJ・F・セバスチャンとAIの彼女しかいないKのオタク繋がり、前作の目を潰されたタイレル博士と盲目のウォレス博士の神様になりたい繋がり、前作のユニコーンの折り紙と木馬のキーアイテム繋がり、前作のフクロウと犬の人造動物繋がり、前作の写真の分析っぽいレイチェルの遺骨の鑑定、前作のフォークト=カンプフ検査法からの蜂の件など、オマージュと言う名の過剰接待はたまりませんでしたが、それよりも、自分は人間なんじゃないかと思わせておいてやっぱりレプリカントでガッカリさせられたり、自分のラブプラスは感情があるんじゃないかと思わせておいてただの基本機能でガッカリさせられたり(娼婦にラブプラスやってるのがバレてキモオタ扱いされるシーンもたまりません)、上げて落とす展開から、「大義のための死は何よりも人間らしい」とそそのかされ、世のため人のために命を張る展開への流れは否応なしに感動的。感情移入し辛い前作の主人公デッカードとは違い、感情移入し易い本作の主人公Kにどっぷり感情移入させられました。

デッカードとレイチェルをつがいにして子孫を残させるタイレル博士の計画は【ディレクターズ・カット/最終版】を考察した時点でわかっていましたが、それをキリストの誕生と重ねたストーリーには唸らされたし、フューチャリスト・デザイナーのシド・ミードが考案し、撮影監督のロジャー・ディーキンスが撮影した廃墟と化したラスベガスには萌えまくり。
ソーラーパネルとビニールハウスが幾何学模様を描くカリフォルニア、広大な廃棄物処理場と化したサンディエゴ、地球温暖化による海面上昇から街を守るために建設された巨大な海壁、急激に変動する天候など、即物的でありながら幻想的な美しいビジュアルにSFの未来像の更新を感じました。

とりあえず、全ての謎を解き明かさず、謎は謎のまま終わらせたドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の心意気に敬礼。優等生過ぎてカルト映画にはなれないけれど、カルト映画の続編としては納得の作品だと思いました。

ちなみに、レプリカントであるサッパー・モートンの家が燃えるシーンはアンドレイ・タルコフスキー監督の【サクリファイス】へのオマージュだったそうです。

※二回目の鑑賞日2017.10.30