見た!
備忘のために:
- 木曜日の13:30分。新宿TOHOでプラス200円で Dolby Atmos 。これは正解。3Dはどうでもいいけど音は大事。なにしろ監督はビルヌーブ。あの重低音が重低音であればあるほど画面が生きる。
- 年齢層が高め。なんだか King Crimson のコンサートに来たような感じ。開始早々、若いお兄ちゃんが立ち上がって劇場を出る。きっと間違えたんだな。
- ポップコーンを食べるところがない。ドリンクを口に運べない。そういうものを拒否する映画。となりで高校生の娘が遠慮がちに咀嚼するコーンが気になるくらい静寂が基調の映画。
- 冒頭の瞳孔でほとんど嗚咽。ブレードランナーを見に来たものへの最初のアッピール。やられた。
- 製造番号がアウシュビッツなら、"K" はカフカで、それよりももちろん人間の枠に入る「気のいい奴」( Good Joe )のほうがよい。それが名前だというデッカード/ハリソンの言葉が泣ける。けれども、プレスリーも、マリリンも、シナトラも、すべては蜃気楼なのだけれど...
- レイチェル(Rachel) はなるほど『創世記』のラケル(Rachel) のことだったのか。彼女の最初の息子の名前はヨゼフ(Joseph) 。Joe はその縮小形だ。そう、ジョーは彼女の最初のこどもなのだ。
その後ラケルは、ベツレヘムへ向かう途中で産気づき、難産の末に命を落とすが、そのとき産み落とされた子供はベン・オニ(私の苦しみの子)と名付けられる。それがベンヤミンと呼ばれる男の子なのだが、この映画では女の子になっているというわけか。
- そう、べつに救世主が男性である必要はない。彼女は Dream weaver 。レプリカントと人間の境界をはぐらかす映画のミューズ。そして彼女が匿われた研究所の名前は Stelline 。イタリア語で「小さな星々」の意。
- S・キューブリックは、どうしたって思い出さざるを得ない名前だと思った。そしてS・スピルバーグ。それからカルロ・コッローディの、そう、もちろんピノッキオ!
- ビルヌーブの撮る空間は、開かれていても閉塞している。空は天蓋としておいいかぶさり、大気は呼吸を圧迫し、光はすべて内なる乱反射によるスペクトル。
- 直前にテッド・チャンの短編「理解」を読んでいたからだろうか。人間がもはや存在しない世界と、そのヴルネラヴィリタが痛いほど伝わってくる。
- 移動マシーンの Peugeot のロゴもそうだけど、もはや日本語や Sony はジョークのレベルなのかもしれない。
- 結局のところ、人類学的マシーン(@アガンベン)は止まったのだろうか?止まったのかもしれないし、止まっていないのかもしれない。ドリーム・ウィーバーはそれを止めたのだろうか。あるいは止めなかったのだろうか。あのラストシーンは、そんな問いを宙吊りにする。