Utopia

カフェ・ソサエティのUtopiaのレビュー・感想・評価

カフェ・ソサエティ(2016年製作の映画)
4.5
マジックアワーのなかで撮影されたかのように、柔らかで輝かしいそのフィルムの艶は映画全編を通し、アレンの甘い記憶の中に優しく放り込まれたような錯覚に陥る。

ハリウッドとニューヨークの対比がともかく哀しいほどにシニカルで、まさにこれぞ人生は喜劇といったところ。叶わなかった恋だからこそ、夢のような浮遊感と煌びやかさがより一層際立つ。


ハリウッドでは純真爛漫といったところで健気さや可憐か娘っぷりを体現していたクリステン・スチュワートが、ニューヨークで一転して通俗的な冷たい貴婦人に成り替わる様に、時の残酷さと彼女自身の女優としての器を感じさせられた。

夜明けのニューヨークが、かつての恋人たちを美しく照らす。このシーンは決して初めてではないはず。過去にもあり、そしてまたこれから先の映画でも出くわす事があるのだろう。それこそが至宝の瞬間たる何かと、思えるほど。
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