エクストリームマン

カフェ・ソサエティのエクストリームマンのレビュー・感想・評価

カフェ・ソサエティ(2016年製作の映画)
4.1
Life is a comedy written by a sadistic comedy writer.

ウディ・アレンの新作を観に行ったというよりジェシー・アイゼンバーグの新作を観に行ったわけで、もっと言えばジェシー・アイゼンバーグとクリステン・スチュワートのコンビ(『エージェント・ウルトラ』のカップル)を観に行ったような感じ。それでも、思わぬ拾い物が幾つもあって、結局ウディ・アレンにしてやられた感じ。

文字通り夢のようであったハリウッド時代のボビー(ジェシー・アイゼンバーグ)の生活はフィルム撮影とライティングによって、そのはじまりからすでに終わりを予感させるような郷愁に満ちている。そんな雰囲気の中で出会うヴォニー(クリステン・スチュワート)は、案の定白昼夢のようなものだったわけで。なまじ、一度上手くいきそうな感じだったからこそよりタチが悪いというかなんというか。

ウディ・アレン的には物語ることそれ自体にはさほど興味がなくて(自らナレーションで処理してしまう場面が複数ある)、それぞれの場面の面白さとかエモーションを重視しているよう。ボビーが娼婦呼んだ時の一連のやりとりとか、コメディ映画の俳優に即興で演じさせる場面みたいだし、クロークに入れ替わり立ち代り来てヴォニーと話すところなんかもシーンとして大事ってよりも、面白さ優先な感じ。

惜しいのは、「2人のヴェロニカ」のもう片方というかじゃない方というか、そんな感じのブレイク・ライブリーが演じる方のヴェロニカの扱い。ジェシー・アイゼンバーグぱわーで出会いから結婚までのやり取りとかいい感じには見えるけど、どう観てもボビーがヴォニーを吹っ切れた瞬間があった(ヴェロニカを心底愛している)ようには見えなくて。その瞬間があってこそ、ボビーとヴォニーがニューヨークで再会してからの場面が活きると思うのだけど。ヴォニー&フィル(スティーヴ・カレル)に対して、ボビーとヴェロニカがなんとも弱い。

まぁ、そういう部分があっても、キャット・エドモンソンの歌唱場面だけでお釣りが来るほど最高だし、あとなによりボビーのストリートワイズな兄貴:ベン(コリー・ストール)が最高で、あの軽やかさは傑出していると思う。『ミッドナイト・イン・パリ』のヘミングウェイ役も良かったし、コリー・ストールがウディ・アレンの映画出るといつも良い。