劇中で音楽が流れない静かな映画。好きなタイプの映画だけど、162分という尺の長さで、1回で観きれず2回に分けて観た。
ルーマニアのブカレストにあるコンサルタント会社で働くキャリアウーマンのイネス。
仕事ばかりの忙しい毎日を送っていた娘が心配でならない父親のヴィンフリートは、休暇を理由に娘を訪れる。
父親と数日間過ごすことになったイネスだが、悪ふざけが大好きな彼とは折り合いが悪い。
やっと父がドイツに帰国してホッとしたイネスのもとに、トニ・エルドマンという別人になりきった父親が現れる。
娘の笑顔を取り戻そうと必死で、けれどとっても不器用だから、なかなかイネスには伝わらない。
父親にとっては娘がいくつになっても娘のままなんだろうね。娘のために頑張る姿に愛が溢れてる。
ヴィンフリートが仕事にちょっかいを出してくるせいもあるのか、難航していたプロジェクトの打ち合わせの最中に観念したように小さく笑うイネス。そのあたりから彼女は色んな事に吹っ切れた様子。
彼女のユーモアのセンスは父親譲りのようで、本気なのか笑ったらいいのか微妙なラインなのが良い。
「大事な出来事は後になってから気づく。当時は分からないんだ」と言うヴィンフリート。娘に「今」を大切に生きてほしいから必死になって笑わそうとしてたんだろうなあ。じんわりと心に沁みるような良い映画。