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パーソナル・ショッパーのKSatのレビュー・感想・評価

パーソナル・ショッパー(2016年製作の映画)
4.1
同じクリステン・スチュアート出てる映画で「カフェ・ソサエティ」と観るの迷って朝安映画を映画館で観たことないなあと思ってこっちにしたのだが、良い選択だった。

とにかく、終始漂う不穏さがハンパじゃない。
最近の予告編の多くは「語りすぎ」「見せすぎ」「ネタバレしすぎ」で、それがたまらなく腹が立つのだが、この映画の場合、真逆。「見せなさすぎ」である。よくぞやってくれた。映画館にいた人のほとんどが観終わった直後、明らかに呆然としていた。

同様に、この映画自体も、「見せなさすぎ」である。主人公がちょうどこのレビューを書いている自分のようにスマホの画面を見ている間、周りは何も見えず、気付くと違う場所にいたりする。しかし、そうでありながらちゃんとサスペンスが成立している。これがもう、凄い。
また、ある場面では、そこにいるべきはずのものが「見えない」。しかし、次に出てくる時は「見えている」。果たして我々は、何を観ているのか?何を観せられているのか?

冒頭から出てくる屋敷やドアの開閉なんかの印象が強いせいで黒沢清的なJホラーと比較する人が多々いるが、闇と光の捉え方が全く違う。どうも我々日本人と西洋人は目の構造が違うらしい。闇(影)の占める割合と光の差し方がいい塩梅であり、いつまでも観ていられる。

そして、「服を着る」という行為でここまでエロティシズムを感じさせるという所に驚いた。ほとんどの映画は「脱衣する」事でエロティシズムが表されるが、この映画はまるっきり逆なのだ。服を着る事で得られる女としての悦びとでもいうか、多幸感とでもいうか。朝安映画をもっと観ていかなければならない!
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