ノラネコの呑んで観るシネマ

午後8時の訪問者のノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

午後8時の訪問者(2016年製作の映画)
4.4
ベルギーの今を感じさせる、ダルデンヌ兄弟らしい骨太の人間ドラマ。
小さな診療所の女医は、診療時間外の夜8時の呼び鈴を無視してしまう。
翌日、彼女は刑事から呼び鈴を押した少女の死を知らされる。
少女は何者かに追われていたらしい。
もし自分がドアを開けていれば少女は死ななかった。
助けを求めた命を見殺しにしたという贖罪の念に駆られた主人公は、身元不明の少女が何者だったのかを探し始める。
そして見えてくる、ベルギー社会の裏側。
売春婦だった少女を知る男たちは口を閉ざし、主人公の行動を快く思わぬ者もいる。
ここでもモチーフとなるのは移民の問題だ。
ジリジリとした葛藤が続くヘビーな心理劇。
決して愉快な映画ではないが、主人公が真っ直ぐな人物なので感情移入はしやすい。
彼女の想いが少しずつ人々の心を動かしてゆく終盤は、作者の希望を反映したものなのだろう。