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わたしは、ダニエル・ブレイクのundoのレビュー・感想・評価

4.2
いつでも言う。何度でも言う。

言わずと知れたパルム・ドール受賞作。
期待通りの名作でした。

老兵が時代から取り残されていく様を通して、人間の尊厳のあり方を描く。

作品の雰囲気は、『幸せなひとりぼっち』や『ティエリー・トグルドーの憂鬱』を連想したり。

ダニエル・ブレイク。
どこにでもいるような男だったハズの彼。
大工一筋、命を燃やしてきた。
最愛の妻に先立たれ、自分も心臓を患いドクターストップ。
気づけば、急速に変化する社会から取り残されている自分の姿に直面する…。

多くの人の生活が改善されるように、効率化を図ること自体は決して間違ったことではない。
しかし、その一方で変化についていけない人々がいることもまた事実。それはまるでふるいにかけているようでもある。
悪意があるわけではないだろう。だけど、「ついてこれないのなら残念ですが…」というスタンス。
取り残されるのは老兵だけではない。社会的弱者と呼ばれるハンデを抱える人たちも。
誰だって、好きで惨めな思いをしているわけではないけれど、涙が止まらなくなる時だってある。

不器用で、口が悪くて意地っ張り。厳しい時もあるけれど、無邪気で優しいダニエル・ブレイク。
人間の温かさを教えてくれる。
web申請しただけでは、こんな温もりは手に入らない。
でも、こういう人ってそんなに珍しかったっけ?

邦題が秀逸。
『わたしはダニエル・ブレイク』じゃなくて本当に良かった。「、」があると無いとで大違い。

私もいつだってそう言いたい。何度でも言いたい。たとえ、死の床にあったとしても。
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