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わたしは、ダニエル・ブレイクのcoroのレビュー・感想・評価

3.8
善き人のためのソナタ

いつものように労働者階級の人々に焦点を当て淡々と描かれるケン・ローチの世界。今回は、ソルジャーよりもっと危険な鉛筆世代の大工さんが主人公。

妻に先立たれてひとり寂しく暮らしている。(そうは見えないけれど、そう思う)
心臓を患い医者から仕事を止められているのに障害者手当を打ち切られてしまう。そんな苦境に立ったダニエルの四苦八苦する姿を微笑ましく見つめていられるのも最初のうちだけで、やがて弱者を守らない理不尽な行政の在り方に怒りを覚えてくる。
彼が言うように街は瞳に光のない人たちで溢れている。善意の寄付で成り立つ施設にさえ光は届かない。そんな変わりゆくスピードの速さについていけなくなってしまった人々の心の痛みや愛を、突き放すように、包み込むように描いている。





以下ネタバレ
(優しくしないで、心が折れるから)

長い長い手続きを終えた後、彼を待っているのは、朝早くから行われる貧者の行進 …

自分が生きることで精一杯なはずなのに困っている人を目にすると放っておけないダニエルブレイク。こんな不確かな社会の中にいても決して尊厳を失うことのないダニエルブレイク。そんな彼が愛おしくてたまらない。
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