ダイヤモンド

エリザのためにのダイヤモンドのレビュー・感想・評価

エリザのために(2016年製作の映画)
2.5
何事も助け合いだからな_。

イギリスの大学への留学を控えた娘エリザ。試験を目前に迫った朝、不幸にも暴行を受けてしまう。外傷こそ大したことないが、心に負った傷は浅くない。当然試験に影響が出る。医師である父はこれまでエリザのために、幼少の頃から熱心に教育してきた。それがたった一度の凶事で無駄になってしまうなんて、理不尽にもほどがある。そのように考える父は、その地位を利用してあらゆるところに手を回す。すべては、自分が果たせなかった“自由”のために。

単なる教育熱心なパパのなりふり構わぬ愛であるだけではなく、ルーマニアの社会も関係しているのかと。
夫婦は1989年の民主化で祖国に戻ってきた経緯を持つ。二人は新しい政府のもとで自由に暮らせると思ったが、実情は異なっていた。全体主義の社会主義体制から脱却したものの独裁的政権が居座り、資本主義国家としての、市場経済への転換がうまく行っていなかった。政治・経済ともに停滞感のある祖国を自分たちの力で変えようと考えたが、それも無理だった。ならばせめて娘には“自由”を手に入れてほしいと、外の世界で生きられるようにと育ててきた。

そういえば、似たように自分の子のためだけのことしか考えていない母親の映画『私の、息子』もルーマニア映画だったっけ。