日本占領下の朝鮮半島にある英和折衷の屋敷を舞台に、カタコトの日本語で織りなされる会話を聞いているとなんとも言えないザワザワした気分になりました。そのカタコトで美しいヒロインが日本語の官能小説を読むに至ると、可笑しいし可愛いし気味悪いし、と自分でも持て余すような感情になりました。
なんだか奇妙な映画なのです。
3部構成で、1部は女詐欺師のメイドの視点から語った、愛と嫉妬と疑惑が織りなすミステリー。
２部は1部とは別視点で描かれ、1部の種明かしとして機能しつつもテイストとしては乱歩風のエログロな愛想劇。
3部は劇薬のような残虐描写が差し込まれたりはするが、おおむね晴れやかに展開してゆくラブロマンス風の冒険劇。
1本の映画で3度おいしい映画だと思います。
その締めくくりのラストシーンが非常にエロティックで風情まであるのに、なんだかバカバカしくて、やっぱり奇妙でした。
この映画のエロさは、もちろんいくつかある美しいセックスシーンが担保しているのでしょうが、もっともエロいのは吐息だったり見つめ合う視線といった、ムラムラとする気持ちが溢れ出るような瞬間かもしれません。
特にヒロインのお嬢様が胡散臭い着物を着て卑猥な言葉を詰め込んだ官能小説をカタコトで熱っぽく読み上げるシーン。その場の男達の妄想と欲望を巻き込みながら達するように小説を読み終わった後の手ぬぐいで額を拭く時の「吐息」がその極みでした。
