天下の超かぼちゃ王大将軍

IT/イット “それ”が見えたら、終わり。の天下の超かぼちゃ王大将軍のレビュー・感想・評価

4.4
「大人はみんな、はじめは子供だった(恐怖Ver.)」

1988年、アメリカの田舎町デリー。
何もない、一見平和な町であったが、最近、子供の失踪が相次いでいた。
周りから負け犬とバカにされていた内気な少年、ビルの弟ジョージ―も、
大雨の日に姿を消して以来、遺体すら発見されていなかった。
両親すら諦めていたが、ビルは密かに友人たちと共に弟の行方を探っていた。
そんな彼らの前に、ソレは姿を現した。
恐怖体験と共に現れるソレはピエロの姿をしており、
ビルも友人たちもそれぞれ別々に、ソレに襲われていた。
町の異常に気付いたビルは、ジョージ―がソレに襲われたと確信し、
ソレの謎を追おうとするのだが。

■「全米で3億ドル突破の謎は解けたか」

多分、ホラー映画好きほど、このヒットには衝撃を受けたと思う。
少なくとも、自分がホラー映画を見出して、
興行収入とかチェックするようになって以降、
ホラー映画がこんな数字をはじき出した事は無い。

大抵、3000万ドルでもヒット、6000万ドル超えたら大ヒット、
1億なんて超えたら神。

死霊館だっけかな?あれで1億超えた時に衝撃受けたのに、3億ドルだと?

そのニュースからずっと気になっていた疑問。

何で?って。

いや、もうシンプルに、何で?って。

アメリカ人、皆頭おかしなったんちゃうの?って。

そして、見て思った。

なんとなく分かるような、分からないような・・・。

本作を観て分かったのは、王道回帰のようで異質なホラー。

子供たちが主人公のビックリハウス系ホラーにスタンドバイミー足して、
エルム街の悪夢の鉤爪で切り裂いたような映画。

今まで見た事あるようで、いや、無いなって感じもあり、
ただ、やってることは米ホラーの王道に回帰した感じなんだよなぁって。

映画館での客層もいつもと違って、若い人たちが多いというか、
カップルや中高生男女問わず、いつものホラーの客層と違う。

何故彼らは見に来たのか。

スゲーおもしれーなって思ったんだけど、
何故彼らが見に来ようと思ったのかは分からず、
正直、ホラーで3億ドル突破の凄さを知らなそうな層が来てるのは、
単に話題ってだけでもないような。

しかし、そんなライトな客層とは裏腹に、
映画は冒頭からガチンコで殴ってくるのであった。

■「ホラーファンも程よく満足なゴア表現」

そんな振り切れてるわけではないけれど、
映画館の客層考えたら冒頭のパンチは試合開始直後のカウンター貰ってダウンした感じになったんでは?

いや、映画ファンとしてもあのシーンはなかなか見る事が出来ない。
まぁホラー映画の一つのタブーやからね。

子供が(オブラートに包んで)ひどい目に合うってのは。

たまにあるのはあるんやけど、マニアックな映画やったり、
まぁそれこそ表現面で配慮があったり。

そこから先も割と正統派なファイトスタイルで、躊躇なく殴りつけてくる。

実はホラーファンとして見る前の懸念だったんやけど、
「どうせ子供向けでしょ?」って。

子供たちが主人公のホラーは大抵、ビックリさせつつ、
結局それほど何もなくハッピーエンド的な?

温いんだよね、一言でいえば。

なんで、多分、ホラーファンの人たちは、
「どうせぬるま湯なんでしょ?」みたいな舐めて見に行くと思うんやけど、
いやぁホラーファン満足のホラーですよ。

そこがやっぱり異質な部分の一つで、
この手のホラー映画のジャンルとしてはあんまり見た事無い攻め。

しかも客層はライト。

ホラーファンは何故か自分は何もしてないのに「どや、これがホラーやで、坊やたち」って、ほくそ笑みながら思ってしまうのだ。

この映画がヒットした要因の一つとして、
子供たちが主人公という敷居の低さは損ないすぎず、
しかし、普通にホラー映画として躊躇なく打ち込んでくるファイトスタイル。

ここが一つあったのかなって思う。

■「やっぱりスティーブン・キング」

「大人はみんな、はじめは子供だった」って言葉は、星の王子さまのあれやけど、
割と映画レビューで使ったりするんやが、ホラー映画で使う事になるとはな。

この映画見て、( ゚д゚)ハッ!って思ったのは、
今になると、子供の頃に戻りてぇとか思うけどさ、
それはポジティブな意味で、過去を見てるけど、
でも、よく考えたら、子供の頃って楽しい事も多かったけど、
意味不明に恐怖心持ってた事も多かったよね。

子供の頃、色んなものが怖かったはず。皆。

それも大人になったら薄れる感情で、
不安とか現実的な将来への恐怖はあるけど、
未知への恐怖的なのって、大人になればなる程微塵もなくなっていく。

この映画は、「子供の頃の恐怖の創造、着想」ってもんが原点にあるような感じがした。
ソレはその創造される恐怖を食らう存在。

なので、恐怖シーンは子供たちが創造する恐怖を映像化した感じになっている。

それだけじゃなく、演出面として「大人」がだいぶファンタジーな存在と言うか、
それもやっぱ恐怖の存在と言うか、人間性を薄く描いている。

映画全体が徹底して子供目線で、
しかし、躊躇なくパンチうってくるから面白いんやろなぁ。

その目線の中には青春要素もあって、
恋とか友情とか、好奇心とか。

そう。これってやっぱスティーブン・キングの代名詞やね。

そうあの映画。

皆も知っている・・・そう・・・ドリームキャッチャー!

え?あぁ、スタンドバイミー?あ、そっち派?

まぁまぁ、それでも良いけどね。

なんやろ、この感覚がスゲーやっぱスティーブンキングでさ。

郷愁と残酷さとを混ぜたような作風。

結局、大ヒットはスティーブン・キングの凄さなんかなぁ。

■「チャプター1」

監督はMAMAのアンディ・ムスキエティ。

MAMAはすっげ予告から楽しみにしてて、ただ日本に入ってくるのがめっちゃ遅れて、
やっと見れたと思ったら、ショボイCGが邪魔してすっと楽しめなかった映画w

とは言え、そこを除けばやっぱり面白かった映画で、
アンディ・ムスキエティ監督の次回作はすげ期待してた。

金掛けさせたらいいもん作るわって。

で、本作を作った事でそれが証明されたけど、
まぁここまで大ヒット監督になるとはねぇ。

これからもホラー映画作り続けて貰いたい。

本作、すっげ面白い作品だったけど、割と長くて疲れてしまったり、
ガチャガチャし過ぎて、結局よくわからなかったり、
まぁ展開が強引と言うか飛ぶ感じがあったりと、
完ぺきではないのは完ぺきではない。

荒は多くあるんだけど、他に無い魅力でカバーをしてるというか、
最近の心霊ホラーブームに飽き飽きしてたんで、
ちょっとね、パンチ力ある方向の王道ホラー映画がまた道を作ってくれるのは嬉しい所。
チャプター1って事で、続きがあるような感じやけど、
また続編が生まれて、これを機に他のホラーも生まれて、
またホラー映画が盛り上がれば言う事無し。

最近、ぬるま湯だったからさぁホラー映画。

背骨がシッカリしたホラーが出てきて、ヒットしたことが個人的には嬉しかった。

まぁ、3億ドルはやっぱアメリカ人全員頭おかしなったんちゃうって思ってるけど。

(追記)
書こうと思って忘れてた。
この映画見て一つ思ったのは、ピエロってさ、個人的には怖いと思ったこと無いけど、
楽しい存在ってより、怖い存在の方がイメージ強いやん。
特に子供が怖がるような感じがするというか。
じゃぁピエロって何なの?って思った。
なんでターゲットの子供が怖がるビジュアルなの?って。
まぁ日本じゃドナルドくらいしか馴染み無いから、
海外ではもっとポジティブなイメージが強いのかなぁ。